建設業法では一括下請負を禁止しています。
建設業界では、一括下請負のことを丸投げと呼んでいますが、これは発注者の信頼を裏切ることになるからです。
この記事を読んでいる人は次のような疑問があるのではないでしょうか?
「何で一括下請負がそこまで厳しく規制されているの?」
「一括下請負の判断基準は?」
「一括下請負に例外規定はないの?」
実際、一括下請負には明確な判断基準がありますし、また例外規定として一括下請負が許される場合もあります。
この記事では、一括下請負禁止について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
一括下請負とは?
建設業法22条では一括下請負の禁止を規定していますが、一括下請負とはどのようなものでしょうか?
まず、一括下請負の定義を確認しましょう。
一括下請負には主に次の2パターンがあります。
例
1、住宅の新築工事で建具工事のみ自社で行って、その他の新築工事の全部を下請業者に行わせる等、工事の主たる部分を下請させるケース
2、戸建て住宅10戸の新築工事を請負って、そのうちの1戸の工事を1社に下請させる等、工事の独立した一部を下請させるケース
一括下請負が禁止されているのは何故か?
次の2つの理由で一括下請負は禁止されています。
・発注者の信頼を裏切ることになるため
・建設業の健全な発達を阻害する可能性がある
発注者の信頼を裏切ることになる
まず第一に発注者の信頼を保護するためです。
発注者は、施工実績、施工能力、経営管理能力、資力、社会的信用など様々な観点から施工業者に信頼を寄せ、施工業者を選んでいます。
それなのに、いきなり高額な工事をどこの馬の骨かも分からない業者に丸投げされたらどうでしょう?
発注者は本当にちゃんと施工してくれるのか不安で仕方ありませんよね。
これはもう信頼を裏切られたも当然ですよね。契約違反と言われても仕方ありません。
建設業の健全な発達を阻害する
また、一括下請負を容認すると、建設業の健全な発達を阻害する可能性があります。
具体的には次のような弊害が考えられます。
・工事施工の責任の所在が不明確になる
・施工能力のない不良業者の排出を招く
・中間搾取の防止(仲介業者の利益搾取防止)
・工事の質の低下・労働条件悪化の防止
一括下請負の判断基準は?
では、一括下請負になってしまう判断基準はどうでしょうか?
自社がまったく関わらず、一括して丸投げするというケースでは分かりやすいのですが、極論を言えば、一括下請負をしているように見えても、一括下請負に該当しないケースもあります。
一括下請負に該当するかどうかの判断基準は「実質的に主たる部分の施工に関与しているかどうか」です。
関与とは?
実質的に関与するには、次のことを行うことが必要です。
・施工計画の作成
・工程管理
・品質管理
・安全管理
・技術的指導等
具体的に言えば、現場に配置された技術者が、発注者との協議・住民への説明から、請負った工事全体について、施工計画書の作成、進歩確認、下請負人からの施工報告の確認、労働安全衛生法に基づく措置、下請業者の施工調整・指導監督等、近隣工事との調整などが挙げられます。
逆に言えば、これらをすべて下請にさせると一括下請負になります。
元請側において単に主任技術者を配置するというだけでは実質的な関与に該当しません。
下請工事に「実質的に関与する」とは、現場に配置する主任技術者は専任であって、元請人と直接的かつ恒常的な雇用関係はもちろん、施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導などすべての面において、元請として主体的な役割を果たす必要があります。
例外規定がある
発注者の承諾があれば、一括下請負は例外的に許されます。
ただし、元請業者が事前に書面により承諾を受ける必要があります。
また、下請負人が請負った工事を一括して再下請負に出す場合も、元請の承諾ではなく、発注者の書面による承諾が必要です。
この例外規定は民間工事にのみ適用されます。
公共工事の一括下請負は全面的に禁止されており、一切の例外は認められません。
また、民間工事でも多数の者が利用する施設(公共性がある)や共同住宅の新築工事については適用されません。
注意点
一括下請負の禁止は、元請業者と一次下請け業者の間だけに適用されるものではありません。
一次下請業者と二次下請業者との間はもちろん、二次下請負業者と三次下請業者の間でも禁止されています。
一括下請負の禁止は、すべての工事に適用されるので、少額の工事でもやはり対象になります。
また、株式を100%保有している子会社でも、工事を一括して行わせた場合には、別々の会社である以上、一括下請負と見なされます。
対策としては、親会社が実質的な業務を行わない以上、親会社を介さずに、直接、子会社が請負うのが妥当でしょう。
下請業者も責任が問われる?
一括下請負の禁止規定は、元請業者の責任がまず問われますが、原則として、下請業者にも及びます。
特に下請負業者は、誠実に仕事をしていても、元請業者が実質的に関与しているのかどうか把握できていないことがよくあります。
しかし、元請業者の適格な技術者が配置されず、実質的に関与していないような場合は、知らず知らずのうちに下請負業者にも建設業法に基づく監督処分(営業停止処分)の対象となるので、注意が必要です。
まとめ
建設業法が一括下請負を禁止している理由は、まず第一に発注者の信頼を保護するためです。
一括下請負に該当する判断基準は「実質的に施工に関与しているかどうか」です。
また、発注者から書面による承諾を得られれば、例外として一括下請負が認められます。
ただし、この例外規定は民間工事のみで、公共工事では認められません。
注意点としては、一括下請負の禁止規定は元請業者だけでなく、下請業者にも及ぶということです。
つまり、一括下請負を「する」のはもちろん、「される」のもダメですよということです。
下請業者は、知らず知らずのうちに、一括下請負違反になることのないように注意が必要です。
一括下請負違反は、監督処分の対象ですが、指示処分を経ずにいきなり、営業停止処分や許可取消処分がされることがあるので、注意が必要です。