これまで、500万円以上の解体工事を行うには「とび・土工工事業」の許可が必要でした。

しかし、平成28年6月に「とび・土工工事業」から分離し、許可業種に「解体工事業」が追加されることになりました。

今後は「とび・土工工事業」で解体工事を行うことはできません。

ただし、いきなり「とび・土工工事業」で解体工事ができないということではなく、経過措置が適用されます。

経過措置とは、言ってみれば猶予期間のようなものです。

この記事では、解体工事業の経過措置について解説しています。また、解体工事業の許可を取るための要件も併せて解説していますので、ぜひ参考にしてください。

【経過措置は令和3年6月に終了しています】

2つの経過措置

経過措置とは、法律等が変わるときの不利益・不都合を減らす措置のことをいいます。

平成26年6月に、解体工事業の許可業種が新設され、その日から「とび・土工工事業」で解体工事が全くできないとなると、解体工事を請負うことができない事業者が続出することになります。

変化に対応するには、それなりのしかるべき準備期間が必要になります。

そこで、次の2つの経過措置がとられることになりました。

  • 許可業種の経過措置
  • 専任技術者の経過措置

1つずつ確認しましょう。

 

許可業種の経過措置

令和元年6月まで「とび・土工」の許可業種で500万円以上の解体工事を行うことができます。

言い換えれば、「とび・土工」の許可があれば、令和元年6月までは「解体工事業」の許可を取らなくてもいいということです。

ただし、平成28年6月までに「とび・土工」の許可を取得していることが条件です。

 

専任技術者の経過措置

平成28年6月までに、「とび・土工」の専任技術者の要件を満たしていれば、令和3年6月までは「解体工事業」の専任技術者の要件を満たしているものとして扱われます。

 

解体工事業の要件

建設業許可の要件は全部で5つあります。

その中で許可業種ごとで違う要件は、「専任技術者の要件」と「※1経営業務の管理責任者の要件」です。

特に専任技術者の要件は許可業種ごとで大きく異なります。

※許可の要件についてはこちらの兵庫県の建設業許可|7分で理解できる許可取得のための5つの要件で詳しく解説しています。

※1法改正により現在はどの工事業種でも同じ

専任技術者の要件

専任技術者の要件は、実務経験か資格のどちらかで満たす必要があります。

資格で要件を満たす場合

次のいずれかの資格が必要です。

・1級土木施工管理技士

・2級土木施工管理技士(土木)

・1級建築施工管理技士

・2級建築施工管理技士(建築または躯体)

・技術士 <建設・総合技術監理(建設)>

技能検定(1級とび)

技能検定(2級とび)・・・合格後、解体工事の実務経験が3年以上必要

登録解体工事試験合格

※太字の資格については、解体工事の実務経験が1年以上、もしくは、登録解体工事講習の受講が必要になります。

ただし、平成27年度までの合格者に限ります。平成27年度以降の合格者は上記の条件を満たす必要はありません。

実務経験で要件を満たす場合

次のいずれかの経験が必要です。

土木工学又は建築学履修した大学卒の者・・・解体工事に関して3年以上の実務経験

土木工学又は建築学履修した高卒の者・・・解体工事に関して5年以上の実務経験

・解体工事に関して10年以上の実務経験

・解体工事(8年)  +  とび・土工(4年)= 合計12年以上の実務経験

・解体工事(8年)  +  土木一式工事(4年)= 合計12年以上の実務経験

・解体工事(8年)  +  建築一式工事(4年)= 合計12年以上の実務経験

土木工学には、農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科も含まれます。

※太字の実務経験については、実務経験の穏和措置によるものです。

専任技術者の要件は他にも常勤性などいくつか留意しなければならないことがあります。

専任技術者についてこちらの建設業許可|3分で理解できる専任技術者の要件で詳しく解説していますので、ご興味のある方は一読ください。

 

特定建設業の専任技術者の要件

次のいずれかの資格・経験が必要です。

・1級土木施工管理技士

・1級建築施工管理技士

・技術士 <建設・総合技術監理(建設)>

・一般建設業における解体工事の専任技術者の要件 + 元請として4500万円以上の解体工事に関し2年以上の指導監督をした実務経験

 

経営業務の管理責任者の要件

経営業務の管理責任者の要件は次のいずれかを満たす必要があります。

※建設業法改正により、現在は、解体工事でなくてもどの工事業種でも一律5年の経営経験でクリアできます。

以下は法改正前の内容です。ご了承ください。

・解体工事業で5年の経営経験がある者

・解体工事業以外の建設業で6年の経営経験がある者

 

ただし、平成28年5月31日までのとび・土工工事業に係る経営業務管理責任者としての経験は、解体工事業に係る経営業務管理責任者の経験とみなします。

解体工事業以外の業種ですでに建設業許可を受けており、その業種で1年以上運営していれば、おのずと6年の経営経験が満たせていることになります。

つまり、すでに許可を受けている業種の経営業務の管理責任者が兼任することができるということです。

経営業務の管理責任者についてはこちらの建設業許可の経営業務の管理責任者の要件を分かりやすく解説で詳しく解説しています。

 

まとめ&注意点

いかがでしたか?

注意点としては、解体工事業の許可がとび・土工工事業から独立したからといって、「とび・土工工事業」の実務経験が「解体工事業」の実務経験としてカウントはされません。

ただし、「とび・土工工事業」の実務経験の中で、一部でも解体工事を行っているような場合は、実務経験としてカウントされることになります。

また、当然ですが特例措置は期限付きです。 「とび・土工工事業」の許可で解体工事をしていれば、令和元年6月までに業種追加で「解体工事業」を追加しなければなりません。

一方、「解体工事業」の許可を取得する際、専任技術者の要件を「とび・土工工事業」でクリアしていれば、令和3年6月までに「解体工事業」の専任技術者としての資格を準備する必要があります。

また、許可を取得せずに500万円未満の解体工事を施工するには、解体工事業の登録が必要です。

許可業種に解体工事業が新設されても登録制度はなくなりませんので、注意が必要です。

詳しくはこちらの解体工事業を行うには解体工事業の登録もしくは建設業の許可が必須で解説しています。