建設業許可を取得するには5つの要件を満たす必要があります。

この要件のうち、経営業務の管理責任者(以下、経管)と専任技術者の要件は特に難しいものになっています。

また、経管の要件は、専任技術者のように資格1つでクリアすることはできないので、すべて実務経験でクリアする必要があります。

かつて経管の要件は非常に難易度が高く、建設業許可の取得にあたって最難関の壁となっていました。

しかし、要件は年々緩和されてきており、昔ほど難しいものではなくなりました。

この記事では、初心者向けに経管の要件について分かりやすく解説し、また要件をクリアできる複数のパターンも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

経営業務の管理責任者とは?

建設業許可を取得するには、経営力、技術力、財産力が優れていることを証明しなければなりません。

このうち、経営力は経管の要件を満たすことで、一定の水準を超えていることを証明します。

建設業は受注生産業で、請負金額も高額です。発注者を始め、下請業者まで色々な人が関わり合っています。

また、建設業は社会的インフラを支える重要な産業でもあり、簡単に倒産をすれば実に多くの人に迷惑をかけることになります。

それだけ社会的責任は重くなるので、経営のプロ = 経管を対外的に責任を持つ者として配置させることが義務となっています。

 

経営管理責任者になるための2つの要件

経管の要件を満たすには次の2つをクリアする必要があります。

  1. 建設業の経営経験がある
  2. 役員など定められた経営上の地位にあったか

1つずつ見ていきましょう。

建設業の経営経験がある

  • 建設業に関して5年の経営経験がある・・・業種は何でもいい

例えば、電気工事で許可を取る場合、電気通信工事業でも鉄筋工事業でもどの業種の経営経験でもいいということです。

かつては、経営経験の業種が許可を受ける業種と異なっていれば、6年の経営経験が必要でした。

2020年の建設業法改正により、どの業種の経営経験でも一律5年でクリアできるようになりました。

経営経験期間は合算できる

経営経験は許可申請をする会社ではなくても大丈夫です。

過去に勤めていた複数の会社での経営経験を合算することが可能ですし、個人・法人を問わずに経営経験を合算することもできます。

また、複数の業種の経営経験を合算することも可能です。例えば、電気工事業が3年、管工事業が2年あれば、通算5年の経営経験があるとみなされます。

 

経営を補佐した経験は認められるの?

建設業の経営経験がなくても、それに近い経験、経営を補佐した経験があれば認められることがあります。

ただし、この場合は5年ではなく、6年の経験が必要です。

 

2、役員など定められた経営上の地位にあったか

建設業の経営経験があっても次の法令で定められた地位になければ、経営経験としてカウントされません。

  1. 会社の役員
  2. 令3条の使用人
  3. 個人事業主
  4. 支配人
  5. 会社の執行役員
  6. 経営業務を補佐していた者

主に1、会社の役員、個人事業主、令3条の使用人、支配人をメインに申請することになります。

5と6は例外的に認められるもので、これらの地位で要件をクリアするのは基本的には難易度が高くなります。

5と6の場合は、役所と事前相談が必要です。

1、会社の役員

「会社の役員」とは、株式会社の取締役・執行役、有限会社の取締役、合名会社の無限責任社員、合同会社の有限責任社員などを指します。

※監査役や幹事、会計参与は役員に含まれません。

2、令3条の使用人

「令3条の使用人」とは支店長営業所長のことを指します。

勤務していた会社で取締役ではなかったとしても、複数の営業所があってそこの支店長として勤務していれば、「令3条の使用人」として経験がカウントされます。

ただし令3条使用人として認められるためには、勤務をしていた会社が建設業許可を受けている必要があります。許可を受けていなければ、認められません。

さらに、建設業許可を受けたときに令3条使用人として登録されている必要があります。

この令3条使用人は登記されるわけではないので、過去の申請書でしか確認ができません。

ですので、前の会社から申請書の写しをもらえなかったり、実質的には支店長や営業所長として勤務していても、許可申請時に形式的に令3条使用人として登録していなければ、経管の証明という面で難しい部分があります。

3、個人事業主

親方等、個人事業主の場合は、事業主としての経験がそのまま経営経験にカウントされます。

4、支配人

支配人」とは、個人経営において事業主に代わって、営業に関する一切の権限を与えられた使用人のことです。支配人になるには、商業登記法上の登記が必要です。

5、会社の執行役員

執行役員とは、取締役会の決議を経て、取締役会または代表取締役から具体的な権限が与えられ、経営業務を総合的に管理する者のことです。

執行役員の場合は、役員などのように法務局で登記されるわけではないので、登記簿謄本などの公的書類で実際に役職についていたかを判断できるわけではありません。

取締役会の議事録などで、執行役員の役職暦を証明することになるのですが、都道府県によって独自のローカルルールもあり、場合によっては役職暦の証明という面で難しい部分があります。

6、経営業務を補佐していた者

いわゆる、「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者」のことで、法人の場合は、工事部長や営業部長、副支店長のことをいいます。

個人の場合は、個人事業主の配偶者や子息のことをいいます。

※経営業務の補佐とは、工事に必要な資金の調達や下請との契約締結、また、取締役会や経営会議に参加したりすることをいいます。

 

追加された緩和要件について

2020年10月の建設業法改正により、緩和要件が追加されました。

建設業の経営経験が5年なくても要件をクリアできることとなりました。(どのような経験が必要なのかはこちら)

 

ただし、事業所全体で「経営業務の管理体制」が整っていることが必要です。

つまり、経管の経営経験が少ない分、会社全体でカバーしましょうということです。

具体的には次の2点をクリアしている必要があります。

  1. 許可を受ける事業所自体が5年以上の建設業を営んでいること
  2. 5年以上の財務管理、または、労務管理、または、運営管理の経験を有する者がいること

2については、経管を補佐する、いわゆる、秘書的な存在となる者です。例えば、個人事業主の右腕として長年サポートしてきた親族などがいい例です。

 

では、緩和された経管の要件を確認してみましょう。次の2つのうちどちらかをクリアしなければなりません。

  • 建設業に関し、2年以上の役員等としての経験を有し、かつ、3年以上の役員等または役員等に次ぐ地位の経験がある者

  • 建設業に関し、2年以上の役員等としての経験を有し、かつ、3年以上の役員等(業種問わず)の経験がある者

どの業界の役員経験でもいいので、他業界から建設業に参入する場合にはうってつけの要件と言えることができます。

 

2つの注意点

上記の要件に該当して経営経験があっても、さらに次の2つの条件を満たさなくてはなりません。

・許可申請者の役員として常勤で勤務することができるか

・証明する確認資料が用意できるか

許可申請者の役員として常勤で勤務することができるか

常勤というのは、例えば週40時間など毎週一定の時間、営業所に勤務することをいいます。

つまり、毎週40時間ほど出勤してその会社の経営に専念することになるので、以下に該当するような場合は常勤と認められません。

・住所が勤務する営業所と著しく遠距離にあり、普通に考えて通勤することができない者

・他の会社で専任技術者や管理建築士となっていたり、宅地建物取引主任者となっている者

・他に別に自営業をしている

・他の会社で常勤の役員となっている※非常勤の役員なら大丈夫

※同一企業で同一の営業所の場合は、専任技術者、管理建築士や宅地建物取引主任者等と兼務することができます。

 

証明する確認資料が用意できるか

この記事で説明している要件をいくら満たせていてもそれを証明できなければ、許可は取れません。

過去の経営の実績と許可申請者の下で常勤で働いていること書類で証明する必要があります。

経営業務の管理責任者の要件の証明資料についてはこちらの建設業許可|経営業務の管理責任者の要件を証明する確認資料は?で詳しく解説しています。

 

まとめ

いかがでしたか?

経管になるには、次のすべてに該当している必要があります。

1、建設業の経営経験が一定期間あった

2、役員など定められた経営上の地位にあった

3、許可申請者の下で常勤として働くことができる

4、上記1、2、3の事実を書面により証明できる

経管は専任技術者のように資格で要件を満たすことができないので、実務経験1本で要件を満たさなければなりません。

そのためどうしても、時間がかかります。建設業に関して、5年の経営経験がなければなりません。

経営業務の管理責任の要件を満たす人が1人しかいないと、その人が辞めたりするなど、緊急の場合に許可を失効してしまいます。

対策としては、要件を満たしている人を雇い入れること(5年以上の経営経験があるのが望ましい)もいいのですが、これから一緒に会社を続けていける人をあらかじめ登記しておけば、5年後には要件を満たせることになりますよね。

また、世代交代を見据えて、家族や親族など後継者として役員に就かせて、「経営業務の管理責任」の要件を備えさせるようにしておくのも1つです。

いつ経管が欠けてもいいように、経管の要件を満たす人が複数名いるのが理想です。