あなたは兵庫県で建設業許可の取得を考えており、このページにたどり着いたのではないでしょうか?
建設業許可を取るにあたって、まず気になるのは「自分の会社は許可を取れるのか?」、「許可を取るのは難しいのか?」というようなことではないでしょうか?
事実、建設業許可は誰でも簡単に取れるものではありません。
建設業許可を取るには、国が求める条件(要件という)をクリアする必要があります。
それらの条件をクリアしたら、次はそれを証明する資料が用意できるかということを検討していかなければなりません。
まずあなたがしなければならないのは、許可が取れるかどうかの確認、すなわち、「要件を満たせているか」、「それを書類で証明できるのか」に尽きます。
この記事では、兵庫県の建設業許可にしぼって、許可取得のための条件とそれを証明する必要書類について詳しく解説しています。
この記事を読めば、ご自身が許可が取れるかどうか、また、許可を取得できない場合でも今後何をすればいいのかある程度の見通しをつけることができます。
非常に長いコンテンツですが、特にクリアするのが難しい経営業務の管理責任者と専任技術者の要件について重点的に初心者でも理解できるように分かりやすく解説しています。
また、各都道府県にはローカルルール=独自のルールがあります。
私は、行政書士として建設業許可の行政手続きを代行する専門家の1人ですが、まだまだネット上ではその地域に根差した情報は少ないと実感しています。
そこで今回はできるだけ兵庫県の地域に根差したコンテンツを目指して執筆しました。ぜひ最後まで一読ください。
Contents
建設業許可の種類
建設業許可は、2種類に分かれており、「一般」と「特定」に分類されます。
それぞれで手続きの難易度が異なってきます。
ここから先は、もっとも相談の多い建設業許可の「一般」について説明していきます。
あなたの会社が、元請として下請業者に4000万円以上の工事を出す場合(特定)はまず以下の記事をお読みください。
あなたの会社が、元請として下請業者に4000万円以上の工事を出す予定がないなら建設業許可の「一般」に該当しますのでこのままこのコンテンツを読み進めてください。
6つの要件が必要
建設業は特殊な産業で受注金額も大きく、下請業者を始め多くの人材が関わっています。倒産をしてしまうと多くの人に迷惑をかけることになりますので、それだけに建設工事は信用がとても大事です。
そのため、建設業許可を取得するには、経営者と技術者のプロがそれぞれ必要で、経営を回していけるだけの財産が確保されていなければなりません。
またそれだけではなく、誠実に仕事をこなせるような人柄の良さも要求されます。
具体的に言うと次の6つの条件を満たす必要があります。
- 経営者のプロがいるか = 経営業務の管理責任者の要件
- 技術者のプロがいるか = 専任技術者の要件
- 500万円あるか = 財産的基礎要件
- 法律違反などをしていないか = 欠格要件
- 誠実に仕事ができるか = 誠実性の要件
- 社会保険への加入義務 = 2020年法改正により要件化
要件を満たすのが難しい順に並べました。やはりネックになるのが1と2の「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」の要件です。
この2つは要件を満たすのはもちろん、満たしていても状況によって書類で証明できないことがあるからです。
1つずつ見ていきましょう。
経営業務の管理責任者の要件
500万円以上の工事を継続して受注していくわけですから、それだけ健全な経営が求められます。
それにはやはり優秀な経営者が必要となります。
そこである程度の経営経験がある経営の専門家を常勤で勤務させることが条件となります。これを経営業務の管理責任者(以下、経管)と言います。
では、具体的にどのような経験が必要なのか見ていきましょう。
5年の経営経験が必要
建設業に関して5年以上の経営経験が必要です。
建設業であればどの工事業種の経営経験がでもかまいません。
ここでいう経営経験とは、法人であれば取締役など役員になっていた期間を指します。
また個人であれば、個人事業主の経験がそのまま経営経験となり、事業主の支配人などの経験も該当します。
経営を補佐した経験でも認められることがある
経営の経験がなくても、経営を補佐した経験があれば場合によっては認められます。
この場合、5年ではなく6年以上の経験が必要となります。
これはいわゆる、経営業務管の理責任者に準じる地位といって、法人では副支店長や部長などの地位にある者、個人では事業主の配偶者、息子などの立場で経営を補佐する者をいいます。
上記の経験がない場合は?
2020年10月の建設業法改正により、緩和要件が追加されました。
ただし、要件が緩和される分、許可を受ける事業所自体が5年以上の建設業を営んでおり、かつ、経管を補佐する者が1名必要です。
この緩和要件で経管となる者は、次の2つのうちどちらかをクリアしなければなりません。
- 建設業に関し、2年以上の役員等としての経験を有し、かつ、3年以上の役員等または役員等に次ぐ地位の経験がある者
- 建設業に関し、2年以上の役員等としての経験を有し、かつ、3年以上の役員等(業種問わず)の経験がある者
また前述のとおり、経管を補佐する者として以下の経験を有する者が別に必要です。
- 5年以上の財務管理、労務管理、運営管理の経験
※経管のさらに詳しい解説はこちらの建設業許可の経営業務の管理責任者の要件を分かりやすく解説を一読ください。
兵庫県で要求される証明書類は?
ここまでの要件については全国で統一されているのでどこの都道府県でも同じです。都道府県ごとに違うのは、これら要件をクリアしていることを証明する書類です。
経管の要件をクリアしていてもそれを証明する書類がなければ、やはり許可は取れません。ここでは、兵庫県で必要となる書類を解説します。
経管で集めなければならない書類は、次の3種類です。
- 建設業の実績を証明する書類
- 経営者の実績を証明する書類
- 過去の常勤性を証明する書類
以前勤めていた会社の実績を利用する場合、その前の会社から証明書類を借りる必要があります。以前勤めていた会社が協力してくれるかどうか必ず確認しておいてください。
※またその場合は他社の印鑑が必要となります。(併せて印鑑証明書も必要)
建設業の実績を証明する書類
次の書類で建設業を行っていたこととその期間を証明しなければなりません。
5年もしくは、6年分の工事契約書、注文書、見積書、請求書など(法人・個人)
※他府県のように1年を12ヶ月分、そして1ヶ月を30日分の実績を証明する必要はありません。明確な基準はありませんが、明らかにブランクを感じさせるような期間がなければ大丈夫です。この点、兵庫県は寛容的と言えます。
あくまで客観的に見て継続して実績を積んでいたことを確認できればOKです。(目安として年間4工事分)
経験と積んだ会社が建設業許可を持っていた場合
建設業許可を持っていればその期間(5年間分)は建設業を行っていた期間と見なすことができます。次のものを用意してください。
許可通知書、許可申請書(控え)等と決算変更届(法人・個人)
※決算変更届がなければ、経験年数分の工事契約書、注文書、見積書、請求書、元帳等が必要となります。許可証1枚では×。
経営者の実績を証明する書類は?
次の書類で経営者になっていたこととその期間を証明しなければなりません。
登記簿謄本・閉鎖役員欄(法人)
※登記簿謄本には、役員として就任時期や退任時期の日付が記載されています。役所はここで本当に必要な期間、役員となっていたかを確認します。
所得税確定申告書控(個人)
※1年度の確定申告書を提出すれば、その1年間は個人事業主となっていたこと(経営経験があること)の確認ができます。5年もしくは6年、必要な分を提出します。
過去の常勤性を証明する書類は?
役員として就任していた期間は常勤で働いていていなければなりません。非常勤は認められません。
そのためいずれかの書類が必要となります。
a.法人税確定申告書、同役員報酬明細(法人)
b.健康保険被保険者証、被保険者記録照会回答票(法人)
c.住民税特別徴収税額通知書(法人)
※bに未加入の場合は雇用保険被保険者資格取得確認通知書や賃金台帳、賃金支払明細書などが必要
執行役員や経営者を補佐した場合の必要書類は?
執行役員や部長、事業主の配偶者や子息など経営者を補佐した者は、上記の書類に加えて当時の組織図や締役会議事録等などそのような地位にあったことが確認できる書類が必要となります。
必要な書類や期間の計算方法は、どのポジションにいたのか、また、役所の担当者によって異なってきますので、かならず事前に役所で相談することが必要です。
※東京都のように一部例外を除いてほとんど認められないというようなことはありません。要件をクリアし、必要な書類がそろえば、十分に可能性があります。
専任技術者の要件
経営者の専門家が必要なように技術者の専門家が必要となります。この技術者のことを専任技術者と言い、営業所に1名常勤で配置することになります。
専任技術者は、経営業務の管理責任者に比べると要件が満たしやすいと言えます。というのは、資格があれば資格1枚で要件を満たせますし、提出書類も資格1枚で済みます。
また、経営業務の管理責任者のように役員である必要はないので、外部からも雇い入れるという選択肢もあります。
専任技術者の要件を満たすには次の3通りの方法があります。
- 指定の資格を持っている
- 学歴+一定の実務経験
- 10年間の実務経験
1つずつ確認していきましょう。
指定の資格を持っている
電気工事士や1級建築士などの国家資格や技能検定などです。
それぞれの工事業種ごとで必要とされる資格は異なります。
学歴+一定の実務経験
本来、実務経験は10年間必要ですが、指定された学科を卒業していれば、実務経験期間は短縮されます。
1つの業種につき大卒なら3年、高卒なら5年の実務経験で済みます。
それぞれの工事業種ごとで必要とされる学科は異なります。
10年間の実務経験
指定された学科を卒業していなければ、1つの業種につき10年間の実務経験が必要となります。
電気工事業の許可を取るなら、10年間の電気工事業の経験が必要です。
※専任技術者についてはこちらの建設業許可|3分で理解できる専任技術者の要件で詳しく解説しています。
実務経験を証明する書類は?
申請する工事の経験を積んだことが確認できる以下の書類が必要です。
- 経験年数分の工事請負契約書、注文書、見積書、請求書などのいずれか
※他府県のように1年を12ヶ月分、そして1ヶ月を30日分の実績を証明する必要はありません。明確な基準はありませんが、明らかにブランクを感じさせるような期間がなければ大丈夫です。この点、兵庫県は寛容的と言えます。
あくまで客観的に見て継続して実績を積んでいたことを確認できればOKです。(目安として年間4工事分)
※他社証明の場合は他社の印鑑が必要となります。(併せて印鑑証明書も必要)
請求書の項目に「保守」、「調査」、「点検」と記載されている場合は注意が必要です。このような作業は兼業事業として建設業法で決められた「建設工事」には該当せず、実務経験としてカウントされないことが少なくありません。
本当に建設工事と言えるのかよく確認をしてください。
過去の常勤性を証明する書類は?
過去の実務経験期間の常勤性を証明できる以下のような書類が必要です。
- 健康保険被保険者証(事業所名と資格取得年月日が記載されているもの)
- 被保険者記録照会回答票
- 特別徴収税額通知書
- 法人税確定申告書の役員報酬明細(法人の役員)
- 所得税確定申告書(個人事業主)
これら常勤性を証明できる書類というのは、社会保険に加入していたり、役員になっていたり、自らが事業主となっていた場合に取得できるものです。
逆に言うとアルバイトやパートといった場合は社会保険等に加入していないことも多いので、常勤性を証明できる書類が取得できないということも少なくありません。
財産的基礎要件
優秀な経営者と技術者がいても、肝心な経営が赤字ではシャレになりません。
せんじつめれば「いつ倒産するか分からない会社には許可はできない」ということです。
ではこの財産的基礎要件はどこでチェックするのでしょうか?
簡単に言えば、500万円あるかどうかです。
次の2つのいずれかで証明します。
預金口座に500万円以上あること
→銀行の窓口で申請者名義の預金残高証明書を発行してもらう必要があります。(有効期間は1ヶ月)
直前の決算において、自己資本額(純資産の合計)が500万円以上あること
→決算書の中に貸借対照表というものがあり、その表の右下に純資産の合計が記載されています。
個人の場合は、貸借対照表で次の計算をします。期首資本金+事業主借+事業主利益-事業主貸+引当金+準備金
※財産的基礎要件についてはこちらの建設業許可|財産的基礎要件の内容と証明書類は?で詳しく解説しています。
人柄の要件
前述のとおり、建設工事は受注金額も大きく、多くの人が関わりあって成り立っています。
それだけにきっちり仕事をしてくれるかどうか人柄や人格が優れていることも信用面で重要となってきます。
ですが、欠格要件と誠実性の要件は、「法律違反をしていないか?」「誠実に仕事をできるのか?」といったことを求めているだけなので、通常であればすでにクリアできているはずです。
1つずつ確認していきましょう。
欠格要件
欠格要件とは、過去に法律違反等がなかったかどうかが問われます。
具体的に言うと、「建設業法関連で罰金刑以上の刑を受けたことがあるかどうか」、「営業停止処分を受けた」、「役員に暴力団員がいる」などです。
こういったことに心当たりがなければ問題ありません。もし、心当たりがあるならこちらの建設業許可|欠格要件について分かりやすく解説をお読みいただき欠格要件に該当するのかしっかり確認をしてください。
また、重要なことは会社の場合は役員全員が対象ということです。社長に問題がなくても役員の中に一人でもいたらアウトなのでここはしっかりと確認をしてください。
逆に言うと、欠格要件に該当する人がいてもその人を役員から外せば、欠格要件には該当しないことになります。
誠実性の要件
誠実性の要件とは、請け負った仕事に対して不正や不誠実な行為をするおそれのないことをいいます。
要は誠実じゃない人、つまり、何かやらかしそうな人には許可を出さないということですが、これは過去の経歴を基準に判断することになります。
具体的には、次のとおりです。
- 建築士法や宅地建物取引業法などの法律によって免許等の取り消し・営業停止処分を受けて5年を経過していない
- 暴力団の構成員となっていたり、暴力団の方が経営に関与している場合
これらに該当していなければ問題ありません。
社会保険への加入義務
2020年10月の建設業法改正により、「社会保険への加入」が建設業許可の要件となりました。社会保険に加入していなければ許可は取得できません。
ただし、社会保険加入の適用事業所は、「法人」と「従業員が5名以上いる個人事業主」です。
従業員が5名以下の個人事業主の場合は、そもそも適用事業所ではないので、社会保険の加入義務はありません。
まとめ
いかがでしたか?
建設業許可の取得は、経管と専技の要件をクリアし、いかにそれを書類で証明できるかにかかっています。
特に経管は最難関の要件となっています。その要因の1つとして、他の要件に比べて緊急策が取りにくいことも関係しています。
例えば、役員の1人が欠格要件に該当していれば、違う者と入れ替えるということもできますし、500万円がないという場合は融資を受けるなど借り入れるという方法も取れなくはありません。
また、専任技術者に関しても資格を持った者を従業員として雇い入れるということもできますよね。
しかし、経管の場合は、役員 = 経営者となりますし、専任技術者のように簡単に雇い入れることはできません。つまり、緊急策が取りにくいのですね。
逆に経管の要件をクリアし、それを書面をもって証明できるというならそれだけで建設業許可の取得の可能性はぐっと高まると言えるでしょう。
記事では触れなかったのですが、経管は代表取締役が兼ねることもできますし、1人の者が経管と専技を兼ねることもできます。
この記事は、兵庫県で初めて建設業許可を取る人が、「自分は本当に許可を取れるのか?」ということに関して大体の見当をつけてもらうために作成しました。
特に経管と専技の要件を重点的にできるだけ詳細に解説しましたが、細かい部分でのニュアンスや各自の状況によっては分かりにくいこともあろうかと思います。
その場合は、専門家や役所で必ず確認するようにしてください。あなたが無事許可を取れることを祈っております。