建設業許可を取得するには、「財産的基礎」の要件を満たす必要があります。
建設業の要件といえば、専任技術者や経営管理責任者の要件の方に目がいってしまいがちですが、財産的基礎要件も重要で、ここでつまづくこともよくあります。
財産的基礎を満たせているのか不安になっていたり、そもそも要件の内容や判断基準が分からないという人もいるのではないでしょうか?
この記事では、建設業許可の財産的基礎要件の内容から証明方法まで解説していますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
建設業許可の財産的要件とは?
財産的基礎要件とは「財産的基礎」=財産力が一定の基準に達していなければならないということです。
この「財産的基礎」が乏しいと、会社が倒産してしまったり、手抜き工事の原因につながります。
このようになると、発注者はもちろん、建設業界は重層化した下請構造になっているので、多くの関係者に多額の損失を出してしまいます。
この財産的基礎がしっかりしているということを許可を取ることで、国からお墨付きをもらう必要があります。
財産的基礎要件は一般と特定で次のように要件が異なっています。
一般建設業の財産的基礎要件
一般建設業の財産的基礎要件は次の3つのいずれかに該当すれば、満たすことができます。
・直前の決算で自己資本が500万円以上あること。
・500万円以上の資金調達能力があること。
・建設業許可を受けて直前5年間の継続した営業実績があること。
では、それぞれの確認資料や証明方法を見ていきます。
直前の決算で自己資本が500万円以上あること
自己資本は建設業許可申請の添付書類である財務諸表で証明します。
自己資本額とは、総資本から他人資本を控除したもので、貸借対照表で確認します。
法人・・・貸借対照表の「純資産合計の額」
個人・・・貸借対照表の期首資本金、事業主借勘定、事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益留保性の引当金、準備金を加えた額
上記の額が500万円を超えていれば大丈夫です。
500万円以上の資金調達能力があること
上記の自己資本額が500万円以下の場合は、次のいずれかの方法で500万円以上の資金調達能力があることを証明します。
・500万円以上の申請者名義の預金残高証明書(普通・当座・定期預金などの合計額でも可)
・500万円以上の申請者名義の所有不動産などの評価書
・500万以上の申請者名義の融資証明書
わざわざ「資金調達能力」と少し曖昧な表現を使っているので、常に銀行口座に500万円以上あることを要求しているのではありません。
少し言葉が悪いかもしれませんが、例えば、許可申請時に1日だけでも500万円以上の残高を用意して、証明書を発行してもらえば大丈夫ということです。
極端に言えば、借金であっても500万円以上集めて、預金残高証明書を発行してもらえば、要件は満たせることになります。
預金残高証明書だけでお金の出所まで分かることはないからです。
建設業許可を受けて直前5年間の継続した営業実績があること
建設業許可を取得すると、毎年、決算変更届を提出することになります。
許可の更新ができたということは、毎年決算変更届を提出して、健全に5年間営業していたことの証明になりますので、財産的基礎の審査は不要ということです。
このケースは、建設業許可を取得した都道府県で業種追加申請や更新申請をする場合に限ります。
新規申請や許可を取得していても他都道府県での新規申請の場合は、前述の方法により財産的基礎の審査が必要です。
特定建設業の財産的基礎
特定建設業許可は元請業者が4000万円以上の工事を下請に出す際に必要になります。
建設業は重層化した下請構造になっており、工事の適正な施工のために下請業者の保護が必要です。
そのため、財産的要件は一般よりもより高度なものになっております。
特定建設業の財産的基礎要件は次の3つのすべてに該当する必要があります。
欠損の額が資本金の額の20%を超えないこと
欠損の額とは、法人と個人で違いはありますが、次のような額をいいます。
法人=賃借対照表のマイナスの繰越利益余剰金が、資本余剰金、利益準備金、その他利益余剰金(繰越利益余剰金を除く)の合計額を上回る額
個人=事業主損失が、事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した際に負債の部に計上されている利益留保性の引当金、準備金を加えた額を上回る額
流動比率が75%以上であること
流動比率は以下の計算式で求めることができます。
「流動比率」 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 = 75%以上
資本金が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4000万円以上であること
資本金の額は次の額のことをいいます。
株式会社=払込資本金
個人=期首資本金
有限会社=資本の総額
合資会社や会名会社など=出資金額
資本金の額は財務諸表で確認できますが、この資本金の基準を満たしていなくても、許可申請日までに増資を行うことによって基準を満たすことになった場合には、基準を満たしているものとして扱われます。
まとめ
いかがでしたか?
「一般」、「特定」ともに財産的基礎要件は、原則、財務諸表により確認します。
既存の企業は許可申請時の直前の決算期における財務諸表で判断し、新規設立企業は、創業時における財務諸表(開始貸借対照表)で判断します。
ただし、「一般」に限っては、財務諸表上で証明できなくても、500万円以上の資金調達能力があれば要件は満たせることになります。
資金調達能力がある」というのは、いつも500万円以上持っていなければならないという訳ではなく、許可申請時において、1日だけでも500万円以上の預金残高証明書を用意するか、もしくは500万円以上の融資を受けられる状態であれば要件は満たせます。
なお、「一般」と「特定」の違いが分からない人はこちらの建設業許可|「一般」と「特定」の違いを完全解説を一読ください。