建設業許可の取得を考えているのであれば、自身の行っている工事が本当に建設業法上の「建設工事」に該当するのか理解しておかなければなりません。
建設業許可を取得するには、許可の要件である経営業務の管理責任者と専任技術者に建設業に関する経験が必要となるからです。
一般的に建設工事だと言われていても建設業法上では「建設工事」に該当しないこともあります。
建設業許可で必要とされる建設工事の経験は、建設業法上で認められた「建設工事」です。
建設業には29の工事業種がありますが、細分化すれば実に様々な建設工事が存在します。
その中には建設業法上の建設工事と見分けがつきにくいものもあり、場合によっては許可要件の実務経験にはカウントされないものもあるので注意が必要です。
この記事では、建設工事に該当しない業務について解説しています。また、建設業と見分けがつきにくい兼業事業についても事例として紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
建設法上実務経験と認められない建設工事
建設工事の施工には数多くの業務が関係してきますが、前述のとおり建設工事に該当しないものもあります。
以下に建設工事に該当しない業務を挙げますが、建設工事に該当しないかどうかは都道府県によって多少異なってきますし、業務内容等を契約ごとに個別に判断することが必要です。
建設工事に該当しないものを大まかに言えば、以下のものになります。
- 機械設備の管理(発注者から貸し出されたもの)
- 土壌分析
- 工事現場の警備・警戒
- 測量・調査
- 建設資材の納入
- 仮設材のリース
- 資機材の運搬・運送
- 機械設備の保守・点検
全てを挙げることはできませんが、さらに具体的な内容としては以下のとおりです。
- 炭鉱の坑道堀削や支保工
- 樹木などの冬囲い、剪定
- 街路樹の枝はらい
- 道路維持業務における伐開、草刈、除土運搬、路面清掃、側溝清掃
- 委託契約による設備関係の保守点検のみの業務
- 建設資材や仮設材などの賃貸
- 造林事業
- 苗木の育成販売
- 工作物の設計業務、工事施工の監理業務
- 地質調査、測量調査
- 建売り分譲住宅の販売
- 雪像制作時の足場などの仮設工事
- 家電製品販売に伴う付帯物の取り付け
- 水道管凍結時の解凍作業
- 自社社屋などの建設を自ら施工する工事
上記の業務は兼業業務として処理されるので、建設業許可の実務経験としてカウントはされません。
建設工事に該当すると考えられる業務
反対に次の業務は建設工事に該当します。
トラッククレーンやコンクリートポンプ車等の建設機械オペレータ付きリース
建設機械のオペレーター(運転作業員)付きのリース契約は、原則、建設工事の請負契約とされています。
また、建設機械のオペレーターの行う行為自体は、建設工事の完成を目的とする行為です。
直接の工事目的物ではない仮設や準備工の施工
これは少し紛らわしいですが、仮設や準備工事でも建設工事となります。
建設業に該当しない兼業事業
兼業者や建設業と類似している業者、例えば建材メーカーや機械装置の製造業者などが建設工事も合わせて請負うことがあります。
これらの業者が建設業許可を取ろうとする場合、自身の本来の事業を建設業と勘違いすることがあります。
例えば、次の2つの業務は建設業には該当しません。
- 不動産業者の行う建売住宅の建築
建設業法上の建設業とは、発注者から請負った工事が対象です。請負わずに、不特定多数に販売をする目的で建物を建築する場合は建設業に該当しません。(一部例外あり)
逆に、不動産業者が土地の販売をしており、その土地に建物の建築を依頼される場合は請負となるので、建設業に該当します。
- 各種機械装置の製造業者の行う搬入や装置などで、明確に据付けもしくは取付け費が請求書などの内訳書に出ていないもの
機械装置の製造業者が、売れたものを搬送して設置する作業を建設業とみなすには、据付け、あるいは取付け費用が見積もられていなければなりません。
まとめ
いかがでしたか?
建設業許可を取得するには「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」の要件で過去の実績が必要とされますが、建設業法に該当しない工事をいくら施工しても実務経験としてカウントはされません。これらの実績を無駄のないよう効率的に積み、また明確に証明できるかということが重要になってきます。
ご自身で見分けがつきにくい工事もあるかと思いますが、その場合は必ず役所に聞いてください。
また、建設工事については、建設業法の別表第1の上欄に29業種に分けて掲げられていますし、国土交通省が建設工事の種類とその内容、例示等をを挙げています。
以下を参考にしてみてください。
業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)