元請業者が下請業者に工事のやり直しを依頼をすることは実際よくある話ですが、その際は下請保護の観点からいくつか留意しなければならないことがあります。
これを無視して下請業者に工事のやり直しを強要すると建設業法に違反になることがあります。
この記事では、工事のやり直しが違反となるケースについてガイドラインの事例を交えて解説するので、ぜひ参考にしてください。
Contents
工事のやり直し費用はどのように負担するの?
ガイドラインによれば、工事の施工後に、元請業者が下請業者に対して工事のやり直しを依頼する場合、工事のやり直しにかかる費用は元請業者が負担することとされています。
ただし、下請業者の責めに帰すべき理由がある場合は、元請業者が費用をまったく負担せずに、下請業者に工事のやり直しを求めることができます。
※ガイドライン・・・国土交通省が発表している建設業法令遵守ガイドライン
責めに帰すべき理由とは?
責めに帰すべき理由とは、故意過失があることです。
故意とは、損害が及ぶことを知っていながらわざとすることをいいます。
また過失とは、損害が及ぶことは注意すれば分かるのに不注意から見過ごしてしまうことをいいます。
下請業者が全ての費用を負担して、工事のやり直しをしなければならないのは次のいずれかに該当する場合に限られます。
- 下請業者の施工が契約書に明示された内容と異なる場合
- 下請業者の施工に瑕疵等(工事の不良等)ある場合
ただし、上記の2つに該当しても、以下のように元請業者に非があれば認められません。
・下請負人から施工内容等を明確にするよう求めがあったにもかかわらず、元請負人が正当な理由なく施工内容等を明確にせず、下請負人に継続して作業を行わせ、その後、下請工事の内容が契約内容と異なるとする場合
・施工内容について下請負人が確認を求め、元請負人が了承した内容に基づき下請負人が施工したにもかかわらず、下請工事の内容が契約内容と異なるとする場合
建設業法違反になる事例
ガイドラインでこそ不当な事例として次のものをあげていますが、やり直し工事については建設業法で明確に規定はされていません。
では、建設業法違反となってしまう判断基準はどこにあるのでしょうか?
これはやはりガイドラインを読み込めば分かります。ガイドラインの事例では2つの観点から建設業法に違反していることが分かります。
元請負人が、①元請負人と下請負人の責任及び費用負担を明確にしないままやり直し工事を下請負人に行わせ、その②費用を一方的に下請負人に負担させた場合
建設業法令遵守ガイドライン6
①「元請負人と下請負人の責任及び費用負担を明確にしない」
建設業法19条2項では、やり直し工事など何か変更があれば、その費用等について必ず契約変更手続きを行わなければならないことを定めています。
「責任および費用負担を明確にしていない」ということは、変更契約を締結していないということですので、建設業法違反となってしまいます。
また、変更契約の場合も当初の契約と同様、契約書を作成し、書面で交わす必要があります。
書面での契約についてはこちらの建設業法|契約は書面を交付して行う義務があります。で詳しく解説しています。
②「費用を一方的に下請負人に負担させた」
建設業法19条3項では「不当に低い請負代金の禁止」を規定しています。つまり、安過ぎる請負代金で工事をさせることを禁止しています。
費用を一方的に下請業者に負担させた場合は、不当に低い請負代金に該当し、建設業法違反となるおそれがあります。
この安過ぎる請負代金の基準は、当初契約工事とやり直し工事を施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額となるかどうかです。
「通常必要と認められる原価」の意味についてはこちらの建設業法の下請保護規定|不当に低い請負代金の禁止規定について解説で詳しく解説しています。
最後に
いかがでしたか?
この記事では、やり直し工事が建設業法19条2項「不当に低い請負代金の禁止」と建設業法19条3項「追加変更契約の締結」の2つの規定から建設業法違反となることがあるということを解説しました。
あなたはこの2つに違反さえしなければ、グレーゾーン(例えば、請負代金が不当に低いというわけではないけど、下請業者にいくらか費用負担させているなど)であれば問題ないと思っていませんか?
しかし、下請業者の経営状況によっては利益を不当に害していると受け取られる可能性もあります。
その場合は、下請業者を対等ではない立場で契約を強制していることになり建設業法違反となるかもしれません。
これは建設業法18条で「対等な立場に基づいて公正な契約を締結をしなければならない」ということが定められているからです。
工事のやり直しを依頼する場合は、工事にかかる費用については元請・下請間でよく協議するようにしてください。