建設業という特性上、元請業者は下請業者に対して優位に立ってしまいがちです。

そのため、建設業法では、下請業者を保護する規定をいくつか設けています。

この保護規定は、下請業者が契約にあたって見積りをする際にも設けられています

これは建設業法20条3項で規定されており、具体的に言うと次の2つです。

  • 見積条件の明確化
  • 適正な見積期間の設定

この記事では、見積りをする際の下請業者の保護規定について解説していますので、ぜひ参考にしてください。

下請契約締結の手順

前述のとおり、元請業者は下請業者に対して一般的に優位な立場となってしまうので、元請業者と下請業者が対等な立場で下請契約が締結されるようにしなければなりません。

下請契約は以下の過程を通して締結されますが、それぞれの過程が適正・対等に実施されなければなりません。

1、見積り

  • 見積依頼
  • 見積期間
  • 現場説明・図面渡し、質疑応答等

2、金額折衝・契約

  • 見積書提出
  • 金額折衝

 

見積り

元請と下請間で、施工責任の範囲や施工条件が不明確だと、後でもめごとの原因にもなります。

やはり、下請業者が見積をする際には、元請業者から下請契約の具体的な内容を提示 = 見積条件の明確化、下請業者に見積落とし等の問題が生じないよう検討する機会を与えること = 適正な見積期間の設定が必要です。

見積条件の明確化

元請業者は、見積りにあたって下請契約の具体的内容を提示することが必要です。

建設業法で定められている見積条件として提示しなければならない内容は次の13項目です。

※請負契約書に記載しなければならない項目のうち、請負代金額以外のすべてとなります。

1、工事内容

2、工事着手の時期および工事完成の時期

3、請負代金の支払い時期、支払方法

4、 当事者の一方から設計変更または工事着手の延期もしくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更または損害の負担およびそれらの算定方法に関する定め

5、天災その他不可抗力による工期の変更または損害の負担およびその額の算定方法に関する定め

6、価格等の変動や工事内容の変更について

7、工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

8、注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容および方法に関する定め

9、注文者が工事の全部または一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

10、工事完成後の請負代金の支払の時期および方法

11、工事の目的物の瑕疵(=欠陥)を担保すべき責任または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

12、各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

13、契約に関する紛争の解決方法

 

元請業者は、上記の項目の中でも具体的な内容が確定していない項目については、その旨を明確に示す必要があります。

正当な理由がないのに、元請業者が、下請業者に対して上記の項目について具体的な内容を契約までの間に提示しない場合は建設業法違反となります。

※正当な理由がなければ、どんなに遅くても契約締結時までには具体的な内容を提示しなければならないということです。

 

1、工事内容については最低限の明示内容が定められている

工事内容については次の8項目が、最低限明示しなければならない内容として定められています。

  • 工事名称
  • 施工場所
  • 設計図書(数量等を含む)
  • 下請工事の責任範囲
  • 下請工事の工程、下請工事を含む工事の全体工程
  • 見積条件及び他工種との関係部位、特殊部分に関する事項
  • 施行環境、施工制約に関する事項
  • 材料費、労働災害防止対策、産業廃棄物処理等に係る元請下請間の費用負担区分に関する事項

 

見積依頼は書面で行うことが望ましい

元請業者が見積依頼を行う場合は、やはり書面で見積条件を記載して内容を伝えるのが望ましいです。

書面で行うことは義務ではないのですが、13項目もある重要な内容を口頭のみで伝えるというのはあまり現実的ではありませんよね。

また、口頭で見積条件を伝えると、元請と下請間で誤認や記憶が曖昧になることで、後日トラブルへと発展することも少なくありません。

※このような元請と下請間の食い違いを避けるには建設システム合理化推進協議会が作成した「施工条件・範囲リスト」を活用するのも1つです。

 

適正な見積期間の設定

元請業者は、下請契約の具体的内容を提示しなければならないということを解説しましたが、それに加えて、下請業者が適正な見積りをするために必要な見積期間を設ける必要があります。

この見積り期間は、工事の予定金額に応じて決められますが、次の3通りがあります。

1、工事予定額が500万円未満・・・1日以上

2、工事予定額が500万円以上5000万円未満・・・10日以上

  • やむを得ない事情がある場合は5日以上

3、工事予定額が5000万円以上・・・15日以上

  • やむを得ない事情がある場合は10日以上

上記の期間は、下請業者に対して契約内容を提示する日と契約を締結する日は含まれません。

例えば「1日以上」空けなければならないのなら、4月1日に契約内容を提示した場合、契約の締結日は最短で4月3日になるということです。

なお、上記の期間は最低限必要な期間ですので、元請業者は下請け業者に対して、状況に合わせて十分な見積り期間を設定しなければなりません。

 

金額折衝・契約

見積書の提出

元請業者は、下請業者に対して契約成立前に見積書の提出を求めることができます。

下請業者は、見積書を作成する際は、「工事の種別」ごとに「経費の内訳」が明らかになるように作成するのが望ましいです。(※義務ではありません)

 

金額の折衝

元請業者は下請業者に対して優位に立ってしまいがちだということをお話ししましたが、それぞれが対等な立場で公正な契約をする必要があります。

これは契約をする際の金額面においても同じで、元請業者が自己の取引上の優位な立場を利用して、必要以上に安い価格で契約を強いることは絶対にいけません。

 

まとめ

いかがでしたか?

建設業という特性上、どうしても元請が立場上優位になる、請負契約が不公平になるということをお話しましたが、建設業法の規定はそれを打破するためのものです。

建設業法は、「対等な立場で公正な契約を締結する」ことを定めていますが、これは何も元請だけに課せられているわけではありません。発注者、国や公共団体でも同様です。

また、自分は下請けと仲がいいからと高をくくっていても、建設業という特性上、知らず知らずのうちに法律違反をしてしまうこともなきにしもあらずです。

下請負契約の見積りにあたっては、見積りの条件を明確にする適正な見積期間を設定する、この2つは必ず守ってください。