公共工事の入札に参加するには、入札参加資格審査を受ける必要がありますが、添付書類として経営事項審査の結果通知書が必要となります。
つまり、公共工事を請負うには必ず経営事項審査を受ける必要があるということですが、この経営事項審査ではどのようなことが審査されるのでしょうか。
この記事では、経営事項審査の概要と審査内容について解説しています。また、経営事項審査を受ける際の手順も併せて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
経営事項審査とは?
経営事項審査とは、公共工事の入札に参加する際に義務付けられている手続きです。
この手続きでは公共工事の入札に参加する建設業者の実力 =企業力や経営規模等を全国一律の基準で審査します。
つまり、建設業者の実力を客観的に点数化し、その会社の成績表つけることが目的です。
そして、この成績表をもとに国や地方公共団体等の発注者が、公共工事を行う建設業者を選定することになります。
審査は2つに分かれる
経営事項審査は次の2つの審査に分けて行います。
- 経営状況分析申請
- 経営規模等評価申請
1の経営状況分析申請では、その名のとおり経営状況を審査します。
2の経営規模等評価申請では、経営規模、技術力、その他の審査項目(社会性等)を審査します。
どのように審査されるのか?
前述の2つの審査によって上記の項目を点数化し、以下の数式に当てはめることで最終的な点数 = 総合評定値(P)を算出します。
総合評定値(P)= 0.25 X1+ 0.15 X2+ 0.20 Y+ 0.25 Z+ 0.15W
経営状況分析申請
Y=経営状況の評点
経営規模等評価申請
X1=完成工事高の評点(工事種類別に算出)
X2 =自己資本額と平均利益額の評点
Z=技術力の評点(工事種類別の技術職員数と元請完工高)
W=社会性等、その他の審査項目(労働福祉、営業継続年数、法令順守などの状況)
経営事項審査の受け方は?
では、経営事項審査はどのようにして受ければいいのでしょうか?
ここでは、経営事項審査の受け方の手順を解説します。
以下の順に進めていくことになります。
- 建設業許可を受ける
- 決算変更届を提出する
- 経営状況分析申請をする
- 経営規模等評価申請をする
- 総合評定値(P)の通知書を受け取る
建設業許可を受ける
まず、経営事項審査を受ける前提として、建設業許可を受けている必要があります。
決算変更届を提出する
建設業許可を受けていれば、決算変更届というものを、毎事業年度終了後4か月以内に提出する義務があります。
この決算変更届では、税理士が作成した決算書をもとに財務諸表を作成します。決算変更届が経営事項審査と何が関係あるのかというと、この財務諸表が次で説明する経営状況分析申請で必要になるということです。
※決算変更届は、財務諸表以外にも多くの書類が必要となります。決算変更については決算変更届とは?提出期限や必要書類などありがちな疑問を解説で詳しく解説しています。
経営状況分析申請
Y点の算出
経営状況分析申請は、許可行政庁ではなく国土交通大臣から登録を受けた指定の民間企業に提出します。
提出の際は決算変更届の際に作成した財務諸表が必要になります。
経営状況分析申請の結果通知書は申請をしてから約1ヶ月ほどで届きます。
※申請はどこの分析機関でもすることができますが、手数料は分析機関によって異なってきます。
全国の経営状況分析機関はこちらのページから確認できます。
経営規模等評価申請をする
X1、X2、Z、W点の算出
経営状況分析申請の結果通知書を添付して、許可行政庁に経営規模等評価申請をします。
手数料は、一律に政令で定められています。
8100円 + 1業種あたり2300円
総合評定値(P)の通知書を受け取る
経営規模等評価申請の受理後、約1ヶ月後に総合評定値の通知書が届きます。
ただし、総合評定値の通知書の受け取りは任意ですので、受け取る場合はその旨の申請が必要です。
前述のとおり、総合評定値(P)は経営状況分析申請(Y)と経営規模等評価申請(X、Z、W)を合計したものです。総合評定値(P)は各業種ごとに求められます。
入札参加資格審査を受ける必要がある
経営事項審査を受けただけでは、公共工事の入札には参加できません。
さらに入札参加資格審査というものを受ける必要があります。
入札参加資格審査申請では、「客観的事項」と「主観的事項」をそれぞれ審査し、総合点数を出します。
この「客観的事項」の審査が、経営事項審査そのものです。つまり、入札参加資格審査を受けるには、経営事項審査の総合評定値の通知書が必要になるということです。
そして、各発注者ごとに評価される「主観的事項」の審査による点数も加味され、最終的に総合点数で順位付けがされます。
※クリックすると拡大表示されます。
※出典:国土交通省ホームページ「経営事項審査制度の概要について」より抜粋
有効期間について
経営事項審査の総合評定値(P)の有効期限は審査基準日(決算日のこと)から1年と7カ月です。
そして、公共工事を請負うことができるのは、経営事項審査を受け終えてからで、かつ、審査基準日から1年7カ月の間のみです。
毎年、公共工事を請負う場合は、審査基準日から1年と7カ月の間に必ず経営事項審査を受け終える必要があります。
もし、この1年と7カ月の間に経営事項審査を審査を受け終えることができなければ、その間は公共工事を請負うことはできません。
毎年公共工事を請負う建設業者は、審査基準日から切れ目なく公共工事を請負うことができるように早めに経営事項審査を受ける必要があります。
まとめ
いかがでしたか?
経営事項審査は、公共工事の入札に参加するために必要な手続きです。
そして、この経営事項審査を受けるには、大前提として建設業許可を受けている必要があります。
経営事項審査は、経営状況分析申請と経営規模等評価申請の2つで、建設業者の実力を客観的に審査し、経営規模(X点)、経営状況(Y点)、技術力(Z点)、社会性等(W点)評価するということをお話ししました。
また、経営事項審査の総合評定値(P)には1年と7カ月という有効期限があるので、毎年続けて公共工事を請負う人は注意が必要です。
経営事項審査の評点結果は、全国一律の基準で厳正に審査されているので社会的信頼性が高いと言えます。
客観的に会社の経営状況を表す会社の成績表となりえます。
それだけに、例えば、経営事項審査の評点結果を金融機関から融資を受ける際の資料にするなど本来の目的以外にも利用できる余地があると言えます。