建設業許可の種類は2つの一式工事と27の専門工事に分かれています。

この中の一式工事はその定義の意味がなかなかイメージできないのではないでしょうか。

次の2つの質問をよくいただきます。

「一式工事の許可を取得すれば、他の専門工事もすべて施工できるの?」

「一式工事のなかに許可を受けていない専門工事が含まれている場合、施工してもいいの?」

一式工事と専門工事の関係性の理解は難しく、みなさん頭を悩まされているのではないでしょうか。

結論を言うと、一式工事の許可を取得しても他の専門工事は施工できません。しかし、一式工事の内容に個別の専門工事が含まれている場合、その施行については一定の要件を満たせば施工できます。

この記事では、一式工事と専門工事の関係性について解説しています。また、一式工事に含まれている専門工事の施工が可能となる要件についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。

一式工事とは?

まず、一式工事の定義から確認しておきましょう。

一式工事とは、主に次の2つの工事のことをいいます。

・総合的な企画、指導または調整のもとに、大規模で複雑な土木工作物または建築物を建設する工事

・複数の専門工事の組み合わせで構成される工事(ex.住宅の建設工事・・・大工工事、左官工事、屋根工事、電気工事などが組み合わさった工事)

このように一式工事の許可は、元請業者が複数の専門工事業者をまとめ上げて、統括・指揮し、大規模な工事を施行するためのものであって、関係する専門工事まで行える万能な許可ではありません。

 

専門工事とは?

一式工事に対して、専門工事は比較的イメージしやすいと思います。

専門工事とは、工事内容の専門性に着目された個別の工事のことで、一式工事のような大規模で複雑な工事を除いたものです。

ex.電気工事・・・発電設備工事や構内電気設備工事、電車線工事

   管工事・・・冷暖房設備工事、空気調和設備工事、厨房設備工事 

上記のようにそれ1つで完結する単独の工事のことです。

 

条件を満たせば一式工事の許可のみで専門工事が施工できる?

前述のとおり、一式工事の許可業者が、一式工事に含まれる専門工事を施工するには、原則として、工事の種類に応じた専門工事の許可が必要になってきます。

しかし、次の条件を満たせば、許可がなくても専門工事が施工できるようになります。

・一式工事の※1主任技術者が施行しようとする専門工事の主任技術者の資格を持っている場合(一式工事の主任技術者が専門工事の主任技術者を兼ねる)

・専門工事についての主任技術者の資格を持っている者を、専門工事の主任技術者として配置する。

つまり、一式工事に含まれる専門工事を施行するには、一式工事の主任技術者とは別に、専門工事の主任技術者も配置しなければならないということです。

この場合の一式工事に含まれる専門工事の主任技術者のことを専門技術者といいます。

もし、専門工事の主任技術者を配置できないのであれば、専門工事に関しては専門工事業者に下請けさせる必要があります。

 

※1 主任技術者とは?

建設業許可を受けた専門工事を施工する場合、その工事現場には主任技術者を配置する必要があります。

主任技術者についてはこちらの建設業許可|主任技術者とは?監理技術者や専任技術者との違いを完全解説で解説しています。

この主任技術者は専門工事の一定以上の実務経験や国家資格がないとなれません。

主任技術者になるための要件は専任技術者の要件と同じです。

要件はこちらの建設業許可|3分で理解できる専任技術者の要件 で確認ください。

 

許可業種の専門工事に附帯してくる工事

この記事では、一式工事に含まれる専門工事の関係性について解説してきました。

これと似たようなケースに、許可業種の専門工事に附帯してくる工事があります。

この付帯工事の施工は、一式工事に含まれる専門工事のケースに準じます。

つまり、附帯工事を施工する場合も、その付帯工事に該当する専門工事の主任技術者を別に現場に配置さえすれば、建設業許可がなくても施工できるということです。

この附帯工事の特徴には主に次の2つのケースがあります。

 

1、主たる建設工事の施工によって必要を生じた他の従たる建設工事

主たる建設工事の機能の保全や能力を発揮させる工事のことをいいます。

例:管工事の施工に伴って必要を生じた熱絶縁工事・・・エアコン設置工事(管工事)に附帯するエアコン設備の熱絶縁工事は、冷暖房機能を発揮させるのに必要になります。

その他:屋根工事の施工に伴って必要を生じた塗装工事

 

2、主たる建設工事を施工するために発生した他の従たる建設工事

主たる工事に関連して余儀なく施工することが必要となる工事のことをいいます。

例:電気工事の施工に伴って必要を生じた内装仕上工事・・・配線入れかえ工事(電気工事)に内装仕上げ工事が必要となることがよくあります。

配線を入れかえるには、配線が通っている床や壁を剥がしたりする内装工事が必要になりますよね。

その他:建具工事の施工に伴って必要を生じたコンクリート工事や左官工事

 

まとめ

一式工事の許可は元請業者に必要となるものです。

この記事では、一式工事の許可業者が、一式工事に含まれる専門工事を、許可なしで施工する方法を解説しました。

この記事でお伝えしている最大のポイントは、専門工事の主任技術者の資格を持つ者がいれば、わざわざ専門工事の許可を取らなくても専門工事を施行できるという点です。

  • 一式工事の主任技術者が専門工事の主任技術者を兼ねる
  • 一式工事の主任技術者とは別に、もう一人専門工事の主任技術者を配置する

この2つのどちらかに該当する必要がありますが、どちらにせよ、自社に主任技術者になれる資格を持つ人材がそろっていなければなりません。

この主任技術者になるための要件は専任技術者と同じです。

もし、専門工事の主任技術者になれる人材がいない場合は、専門工事の許可業者に下請けさせる必要があります。

また、この記事では専門工事に附帯する工事についても触れました。この付帯工事の施工についても、一式工事に含まれる専門工事のケースと同様に取り扱われます。