あなたは建設業許可を取ろうとしており、社内に経営業務の管理責任者(以下、経管)の要件を満たす人材がいないか、もしくは、建設業許可は取得しているが、経管が退職するなど不測の事態で頭を悩ませているのではないでしょうか?

経管が自社にいなければ、建設業許可は取得(もしくは、維持)できませんが、まったく打つ手がないという訳ではありません。

最も手っ取り早い解決方法は、経管を外部から雇い入れることです。 ただし、外部から雇い入れる場合、いくつか留意しなければならないことがあります。

この記事では、経管がいないときに取るべき対策について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

経営業務の管理責任者を外部から雇うという考え

これから許可を取ろうというときに、経管になれる資格を持つ人材が自社にいない、もしくは、退職などをしていなくなった場合、応急措置として外部から雇い入れるという選択肢があります。

ただ、経管は専任技術者と違い、経営に携わるもの、すなわち、幹部にあたりますので、あらかじめ信頼関係を構築できている人物が理想です。

そういう意味では、軽はずみに雇い入れることはできないということです。 ですので、外部から雇い入れることを検討する前に、自社に本当に経管の要件を満たす人材がいないかよく検討してください。

もう一度、経管の要件を確認しておきましょう。

・建設業に関して5年の経営経験がある(どの工事業種でも構わない)

※経管についてはこちらの建設業許可の経営業務の管理責任者の要件を分かりやすく解説で解説しています。

 

外部から雇い入れる際の注意点

経管の要件を満たした人を雇い入れる際は次の4つの点に注意してください。

1、経管の要件を証明できる確認資料は用意できるか

2、常勤で勤務できるか

3、許可を受けた後も経管として勤務を継続できるか(名貸しは禁止)

4、取締役として登記をする(個人事業の場合は支配人登記をする)

1の確認資料は、大前提として、要件を満たしていても、そもそもそれを証明をする確認資料が用意できなければ、元も子もありませんよね。きっちり確認をしてください。

※要件の確認資料についてはこちらの建設業許可|経営業務の管理責任者の要件を証明する確認資料は?で詳しく解説しています。

2の常勤とは、例えば週40時間など毎週一定の時間、営業所に勤務することをいいます。通常、社会保険の加入が必要になります。

経管として雇い入れたら、必ず常勤で勤務を継続させてください。肩書きだけで雇い入れることはできません。 肩書きで雇い入れると、「名貸し」に該当し、罰則が適用されることになります。

名貸しは懲役や罰金刑が科されるだけでなく、許可の取消しの対象となります。 また、1度許可を取消されると、取り消された日から5年間は許可を取得できません。

 

役員や個人事業主としての経験以外でもカウントされる

経管の要件を満たすには、何も100%の経営経験が必要という訳ではありません。

例えば、経営者として似たような経験があればカウントされます。 いわゆる「経営者に準ずる地位」にあった人であれば、要件を満たせる可能性があります。

この「経営者に準じる地位」とは次のいずれかに該当します。

  1. 6年以上経営経験を補佐した経験をもつ者
  2. 執行役員等として5年以上建設業の経営業務を総合的に管理した経験をもつ者

1、経営経験を補佐した者とは、役員の下の地位の人のことで、工事部長や営業部長で経営者を補佐した経験をもつ者です。 また、個人の場合は、個人事業主の配偶者や子息などの事業承継者のことです。

2、執行役員とは、経営業務の執行に関して、取締役会の議決にもとづいて取締役会または代表取締役から具体的な権限委譲を受けた者のことです。

 

経管を新たに雇い入れたときの手続き

経管が退職などをして、社内や外部から新たに経管を就任させたときは、「経営業務の管理責任者証明書」を届け出なければなりません。

この「経営業務の管理責任者証明書」は、前任者の経管が役員を退任して2週間以内に提出する必要があります。

 

就任日と退任日は登記された日ではない

ちなみに、経管に就任させるには、役員として登記されていなければなりません。

注意したいのは、この登記をもって経管の「就任日」になるのではなく、「就任日」になるのは就任を承諾した日のことです。

また、「退任日」も同じです。「退任日」は辞任届を提出した日になります。 例えば、退任の登記をまだしていないからといって、500万円以上の工事を行うと違反になります。

すでに辞任届を提出していれば、経管を欠いていることになるからです。

 

要件を満たす者がいない場合

残念ながら、内部もしくは外部で経管の要件を満たす人材が見つからなかったときは、廃業届を提出する必要があります。 ここで言う「廃業」とは会社をたたむということではありません。

許可を受けていた建設業の一部を廃止するという意味です。 こちらの建設業許可|廃業届と届出書の概要と関係性を解説で詳しく解説していますので、1度ご確認ください。

この廃業届を怠ると、思わぬところでペナルティーを受けることになるので、必ず提出してください。

 

対策は?

経管が退職や病気などで、急にいなくなってしまうことも少なくありません。

その場合は、外部から雇い入れることも1つですが、できれば不測の事態に備えて、信頼のおける人材を5年間、取締役としてあらかじめ役員登記をしておくのが望ましいです。

経管の要件は、専任技術者と違って資格1つで満たすことはできません。実務経験のみで満たす必要があるので、どうしても時間がかかります。

また、小規模事業者などの場合、社長が経管を兼ねているケースも少なくありません。

もし、代表者の引退後も事業を継続させていくのなら、家族や親族などの後継者に役員に就かせておいて経管の要件を備えさせるなど世代交代をスムーズに行えるようにしておく必要があります。

まとめ

いかがでしたか? 一番いいのは、許可の取得に向けて(もしくは、不測の事態に備えて)信頼のできる人材をあらかじめ役員登記をしてコツコツと育てることです。

しかし、今すぐ経管の人材を確保しなければいけない人も少なくありません。 その場合は、やはり経管の要件を満たしている人材を外部から雇い入れることが最善策となります。

その際は、役員に就任させ、2週間以内に許可行政庁に届け出る必要がありますが、社会保険に加入させるなど必ず常勤性が確認できるようにしてください。

また、許可取得後も不測の事態(または、世代交代)に備えて、役員の中に要件を満たす人材を複数名を確保するように心がけてください。