請負契約を締結すると廃棄物の処理費用など工事で発生する経費や代金振り込み時の手数料等様々な費用がかかってきますが、それらを請負代金から差し引くことを赤伝処理といいます。

あなたはもしかすると「うちは元請として仕事を回しているし、下請と仲が悪いわけでもないし、これくらいの経費は差し引いても大丈夫だろう」と思っていませんか?

この赤伝処理は、あまりにも一方的に差し引けば建設業法違反になるおそれがあります。

ただし、赤伝処理それ自体が違法となるわけではありません。

では、どの程度までなら許されるのでしょうか?

この記事では、赤伝処理が違法となるデッドラインを事例とともに解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

赤伝処理とは?

改めて建設業においての赤伝処理の定義を確認しておきましょう。

建設工事には、元請業者と下請業者の間で様々な諸費用が発生しますが、例えば以下のようなものがあります。

  • 一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の費用
  • 下請代金の銀行口座への振込手数料など
  • 下請工事の施工に伴って発生する建設廃棄物の処理費用
  • その他の費用(駐車場や宿舎の使用料、弁当ゴミ等のごみ処理費用、安全協力費など)

赤伝処理とはこれらの費用を下請代金の支払い時に差し引くことをいいます。

 

赤伝処理自体が違法というわけではない

冒頭でも言いましたが、赤伝処理をしたからといってそれだけで違法となるわけではありません。

ただし、元請業者と下請業者双方の協議・合意が必要となります。

差し引く根拠や内容を明確にして、下請業者の費用負担が過剰にならないようにしなければなりません。

 

赤伝処理が違法となる理由

では、一体どのようなケースが違反にになってしまうのでしょうか?

具体的に言うと次の2つの行為が建設業法違反となる可能性があります。

  1. 下請業者と協議・合意がないのに元請業者が自己の取引上の地位を不当に利用して下請代金から一方的に諸費用を差し引く
  2. 下請業者と合意があっても諸費用を差し引く根拠がよく分からない、または実際にかかった費用より過大な費用を差し引く

上記の行為は建設業法18条「建設工事の請負契約の原則」と建設業法19条の3「不当に低い請負代金の禁止」に違反するおそれがあります。

 

具体例として、例えば次のようなことに見覚えがありませんか?

1、下請業者と合意がないのに、下請工事で発生した建設廃棄物の処理費用や下請代金の振込手数料などを下請代金から差し引く

2、下請工事に建設廃棄物が発生していないのに建設廃棄物の処理費用という名目で下請代金から一定額を差し引く

3、元請業者の販売促進という名目で協力費等を下請代金から差し引く(差し引く根拠がよく分からない)

4、工事のために下請業者に使用させる駐車場や宿舎の使用料を実際にかかる費用よりも過大な金額を差し引く

5、元請業者と下請業者の責任および費用負担を明確にせずに、工事のやり直しを別の工事業者に行わせ、その費用を一方的に下請代金から減額する

 

赤伝処理の内容は見積条件・契約書に明示する

下記の赤伝処理を行うには、元請と下請双方の協議・合意が必要ですが、その協議した内容や差引額の算定根拠などを契約書に明示する必要があります。

  • 下請代金の支払に関して発生する諸費用
  • 元請負人が一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の労働災害防止対策に要する費用
  • 下請工事の施工に伴い副次的に発生する建設廃棄物の処理費用

そして、これは契約時だけでなく見積時にも明示する必要があります。

※建設廃棄物については、建設リサイクル法で建設副産物の再資源化に関する費用を契約書面に明示することが義務付けられてます。

協議した内容は、契約時はもちろん、見積り時に書面化しておくと、後で「言った言ってない」といったもめ事を避けることができます。

契約書と見積については以下の記事で解説しています。

元請と下請の見積り|下請業者を保護する2つの義務を解説

建設業法|契約は書面を交付して行う義務があります。

 

最後に

赤伝処理についてあなたは「仕事を回す方としてはこのくらいのことは暗黙の了解だ」もしくは「他の業者もこのくらいのことはやっている」と思うかもしれません。

実際、このような気持ちはどの業者も少なからずあるのかもしれません。世の中綺麗ごとだけではありません。

 

しかし、下請業者にしてみれば費用について「これは何に引かれているの?」と疑問が残りますし、不誠実なことが続けばやはり不満は募ってきます。

もっと大事にしてくれ業者が現れるなら、本音としてはそちらに流れたいというのが人情ではないでしょうか?

建設業界は法律と商習慣が噛み合っていないと言われる業界です。

建設業法には多くの下請保護規定がありますが、このすべてを守れているは大企業だけかもしれません。

しかし、だからといって中小企業なら仕方ないのでしょうか?

赤伝処理に関しては努力次第で何とかなりそうな気がしませんか?

 

正論ばかりを言ってしまい申し訳ありません。

 

しかし、事業を末永く続けていくのなら私としてはやはり法律を守って事業をしてほしいと思っています。

みなさんそれぞれに事情があると思いますが、いきなり100%を変えるのは難しくても、少しずつ変えていく = 気持ちを見せるということは非常に重要です。

そのためにも、この記事でお話しした赤伝処理については、下請業者とその内容をきっちり協議し差し引き額が過剰にならないよう注意してください。