建設業許可の取得を考えている人は、専任技術者や主任技術者、監理技術者の違いと役割を理解する必要があります。

専任技術者の選任は、許可の要件となっているので、申請時に必ず選任しなければなりませんが、主任技術者は許可の要件ではないので、申請時に選任する必要はありません。

しかし、許可取得後、工事現場に配置する義務があるので、誰がなるのかあらかじめ決めておかなければなりません。

主任技術者がいないと、許可を取得しても工事を施工することができません。

この記事では、専任技術者や主任技術者との違いや主任技術者になるための要件、役割等について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

主任技術者とは?

建設業許可を受けると、建設工事を施工する際に、その工事現場に必ず主任技術者を配置しなければなりません。

この主任技術者は、元請・下請(2次下請、3次下請と再下請先まですべて)、また請負金額に関わらず必ず配置する必要があります。

主任技術者とは、工事現場で施工上の技術に関して管理をする者のことです。

 

主任技術者の役割

主任技術者の主な役割は、施工計画の作成や工事の工程管理、工事目的物や工事用資材の品質管理を行います。

また、技術上の指導監督をしたり、工事の施工に伴う災害発生を防止するための安全管理も行います。

主任技術者になるための要件は専任技術者の要件と同じですが、専任技術者が主任技術者を兼ねることはできません。詳しくは後述します。

※専任技術者の要件はこちらの建設業許可|3分で理解できる専任技術者の要件で解説しています。

 

鉄筋工事と型枠工事の主任技術者の配置省略

2020年の建設業法改正により、鉄筋工事と型枠工事に限り、再下請先の主任技術者の配置をすべて省略できるようになりました。

この場合、一次下請の主任技術者が、再下請先の技術上の施工管理まで担います。

ただし、主任技術者の配置を省略するには次の要件をすべてクリアしなければなりません。

  • 下請代金の総額が3,500万円未満
  • あらかじめ1次下請が元請(注文者)の書面による承諾を得ること
  • 1次下請と2次下請負が書面による合意をすること
  • 配置される主任技術者に、1年以上の指導監督的実務経験があり、かつ当該工事現場に専任で配置
  • 再下請の禁止

 

監理技術者とは?

特定建設業者は元請として、4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の工事を下請に出す場合には、主任技術者に代えて監理技術者を置かなければなりません。

逆に言えば、特定建設業者で元請でも4,000万(建築一式工事の場合は6,000万)以下の工事を下請に出す場合や下請に出さず自社ですべて施行する場合は、主任技術者で大丈夫です。

監理技術者の役割は主任技術者の役割に加えて、下請業者を適切に指導監督をするなど総合的な機能を果たします。

また、監理技術者になるための要件は特定建設業許可における専任技術者の要件と同じです。

 

工事現場における技術者の専任義務について

主任技術者・監理技術者は、ある一定規模以上の工事については工事現場ごとに専任でなければなりません。

専任とは、常時継続的にその建設工事現場にいなければならないということです。

主任技術者は原則とし、複数の工事現場で兼任することが認められています。

しかし、この専任性が求められると、複数の工事現場で主任技術者・監理技術者の兼任ができなくなります。

 

一定規模の工事とは、公共性のある施設または多数の者が利用する施設もしくは工作物に関する重要な建設工事で、請負金額が3500万円(建築一式工事の場合は7000万円)以上の工事のことをいい、具体的に次のものです。

・国、地方公共団体が発注する工作物

・鉄道、道路、上下水道などの公共性のある施設

・学校、図書館、工場、病院、ホテルなど多数の者が利用する施設

結局のところ、個人住宅を除いて、ほとんどの工事が対象となります。

 

例外として2つの工事現場が近接していれば、1人の主任技術者が2つの工事現場の主任技術者を兼ねることができます。

ただし、近接しているだけではなく、建物同士一体性があるなど密接に関係している必要があります。例えば、学校とその図書館の工事の場合などです。

※この例外は管理技術者には一切認められません。

 

監理技術者の専任義務の緩和

2020年の建設業法改正により、監理技術者は現場に「補佐する者」を置くことを条件に3,500万円以上(建築一式工事は7,000万円)の工事を2つまで兼務できるようになりました。

この「補佐する者」は誰でもいいというわけではなく、主任技術者の要件を満たし、さらに「1級技士補」の資格を保有している必要があります。

技士補とは?

現行の技術検定試験(施工管理技士試験)が今回の改正で2020年4月から1級、2級ともに「第1次検定」と「第2次検定」の2つに分離することになりました。

例えば、1級の「第1次検定」に合格すれば、1級技士補、「第2次検定」に合格すれば1級技士の資格を得ることができます。

専任技術者との兼任について

専任技術者というのは、工事現場ではなく、営業所に常駐する技術者のことです。

営業所に常駐する義務があるので、原則として主任技術者・監理技術者と兼任することはできません。

しかし、これでは要件を満たす人が1人しかいないような1人親方や小規模の事業所などでは建設業許可が取得できないことになってしまいます。

そこで例外規定として、工事現場と営業所が近接していて常時連絡が取れる体制で、専任性が求められない工事の場合は、主任技術者・監理技術者と専任技術者を兼務できることになっています。

 

一式工事の場合の注意点

土木一式工事や建築一式工事を施行する場合、一式工事の中に他の専門工事が含まれているケースがありますよね。

例:住宅の建築工事・・・大工工事、屋根工事、内装仕上げ工事、電気工事、管工事など

 

土木・建築一式工事を受注して、併せてその中の専門工事を施工するには、別途その専門工事の主任技術者が必要になります。

 

もちろん、一式工事の主任技術者がその専門工事の主任技術者を兼ねることもできますが、その場合は、その専門工事の主任技術者の資格を持っていなければなりません。(主任技術者になるための要件は専門工事ごとに異なります。)

 

一式工事の主任技術者が専門工事の主任技術者の資格を持っていなければ、会社の中から、別その専門工事の主任技術者の資格を持つ者を選任しなければなりません。

自社に専門工事の主任技術者がいない場合は、その専門工事については建設業許可を受けている専門工事業者に下請に出す必要があります。

 

まとめ&注意点

専任技術者、主任技術者、監理技術者は名前が似ているので混同しやすいですよね。

専任技術者は営業所で技術的なサポートする技術者のことです。

主任技術者というのは、工事現場で施工上の技術をサポートする技術者です。

また、監理技術者は元請の許可である特定建設業許可業者に必要で、大規模な工事を下請に出す場合のみ必要になります。

主任技術者は直接的かつ恒常的な雇用関係にあるものと定められています。

直接的ということは、出向(専任技術者はOK)や派遣社員では認められませんし、恒常的というからには、非常勤や短期間勤務の人、工事の直前に雇うことなども認められません。

※主任技術者と監理技術者の雇用関係についてはこちらの主任技術者・監理技術者の雇用関係とその特例を解説で詳しく解説しています。