法改正により、現在、個人で取得した許可を法人化する際に引き継ぐことが可能です。

以下は、法改正前の解説ですので、現在の事実とは違う内容となっています。

おそらくあなたは、建設業許可を取得し、個人事業主として建設業を営んでいて、法人化を検討しているのではないでしょうか?

その際、「個人で取得した許可は法人に引き継げるの?」、「変更届じゃダメなの?」等、様々な疑問があるかと思います。

また、仮に許可を取り直すとなると、「無許可の期間=空白期間が生じるのではないか?」と不安になっていませんか?

この記事では、建設業許可を取得している個人の方が、法人成りするときに抱く様々な疑問について触れていますので、ぜひ参考にしてください。

変更届では対応できない

個人で取った建設業許可を法人に引き継ぐことはできません。

これは個人事業で建設業を営むには個人という主体に許可が与えられますし、法人で建設業を営むには法人という主体に許可が与えられるからです。

法人成りをする時は、あらためて法人として建設業許可を取り直す必要があります。

このことを「法人成り新規」といいます。

よく質問をいただくのが「変更届でもいいの?」というものですが、もちろん変更届では許可を引き継ぐことはできません。

間違えて、変更届を提出すると空白期間=無許可期間が生じてしまい、建設業違反法になり、発注者や元請ともめる原因にもなります。

また、公共工事の競争入札参加資格業者になっているケースでは、大きなトラブルに発展する可能性があります。

 

何か引き継がれるものはある?

法人化しても、原則、個人事業主のときの競争入札参加資格は引き継がれます。

また、一定の要件を満たせば、建設業許可の許可番号や経営事項審査の実績の引継ぎが可能になる場合があります。

一定の要件って?

  1. 許可を受けていた個人が新規に設立した法人であること
  2. 許可申請時点で個人の許可が有効であること。
  3. 建設業に係る資産・負債(完成工事未収入金、材料貯蔵品、工事未払金など)が個人から法人に引き継がれていること。
  4. 個人事業主時代の経営業務の管理責任者が、引き続き法人の経営業務の管理責任者に就任すること。
  5. 新設法人の代表者及び主要株主(発行済み株式の過半数を有する株主)が、前事業主又は前事業主の親族であること。
  6. 新規許可申請の財産的基礎の要件を満たすこと
  7. 新設法人が第1期の確定申告を行うまでに許可申請をすること

※都道府県によって違いがあるので、事前に確認が必要です。

 

個人から法人に切り換えるには許可のブランクが生じる

法人化して許可申請をするには、個人で受けた建設業許可については廃業届を提出し、法人として建設業許可を取り直なければなりません。

ここで1つ問題が生じます。

それは個人の建設業許可を返納してから、法人として許可申請をするとどうしても許可が下りるまで空白期間=無許可期間ができてしまうことです。

その間はもちろん、500万円以上の工事を行うことはできません。

許可申請が受理されてから、許可が下りるまでは多くは知事許可で1カ月、大臣許可で4カ月程度かかってしまいます。

便宜を図ってくれることもある

これは各都道府県にもよりますが、法人成りの場合、無許可期間が生じないように、便宜を図ってくれることもあります。

また、許可要件についての添付資料なども、省略できるものもあったり、個人事業主時代の実績や実態等を考慮してくれる自治体もあります。

会社設立時に注意したい3つのポイント

法人成り新規の場合、許可申請前の会社設立時に、3つの注意すべき点があります。

500万円の資本金が必要

会社を設立するには実質「資本金1円」でも設立可能です。

しかし、建設業許可を取得するには、資産要件として500万円以上の資本金が必要です。

設立時に500万円以上の資本金がない場合は、500万円以上の残高証明書や500万以上の融資証明書が必要になります。

※特定建設業の場合は、4000万円の資本金が必ず必要です。残高証明書などは使えません。

定款の事業目的が必要

定款は会社の憲法などと呼ばれ、会社の商号や住所、事業目的など根本的な規則が記載されたものです。

定款は会社を設立する際に必ず必要になるのものですが、ここで注意したいのが事業目的です。

事業目的に取得したい建設業許可の業種名を記載されていなければなりません。建設業の業種は29業種ありますので、具体的な工事の業種名を記載すれば大丈夫です。

また、将来的に始める予定の業種があれば、それも併せて記載しておいてください。

事業目的に記載している業種の許可をすぐに取らなくても法的には全く問題ないですし、後で業種を定款に付け加えるとなると、定款を変更し登記もしなければならず、非常に面倒な作業が発生するからです。

 

世代交代を見据えた役員の登記

法人化するメリットの1つは、やはり世代交代ができるという点です。

個人で許可を取得した場合、個人が死亡したら、その時点で建設業許可は失効していまいますが、法人として許可を取得していれば、たとえ代表取締役が死亡した場合でも建設業許可は失効しません。

これは法人という主体に許可が与えられているので、あらたに親族などを代表者に迎えいれば済む話ですよね。

ただし、今現在、経営業務の管理責任の要件を満たしているのがあなただけだとしたら、世代交代がスムーズにできるとは限りません。

あなたが、引退するときのことを考えて、自分の家族や親族を役員に就かせて、「経営業務の管理責任」の要件を備えさせるようにしてください。

これは専任技術者(役員に就く必要はない)の場合も同じです。

まとめ

法人成りする場合は個人で取得した許可は引き継ぐことはできませんし、変更届では対応できないので、許可を取り直す必要があります。

個人で受けた建設業許可に関しては廃業届を提出し、法人としてあらたに許可を申請するので、どうしても空白期間=無許可期間が生じてしまいます。

この空白期間は役所の審査期間ですので、私たちの手ではどうすることもできません。

できることがあるとすれば、それはやはり、廃業届と許可申請をスピーディに行うことです。

もし、空白期間に500万円以上の工事を施工してしまうと、建設業違反になり3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられるので、注意が必要です

また、法人成り新規の場合、前述の会社設立時の3つの注意点の他、役員全員が欠格要件に該当していないことが必要です。