建設業許可は「一般建設業許可」と「特定建設業許可」に分かれています。
一般建設業と特定建設業の違いは、簡単に言えば、「元請」として許可を取るか、「下請」として許可を取るかです。
つまり、請負工事のすべてが下請けの場合は一般になりますし、元請(発注者から直接請け負う)として一定額以上の規模の工事を下請けに出す場合は特定になります。
この記事では、建設業許可の一般と特定の違いを詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
一般建設業と特定建設業の違い
建設業の工事の種類は全部で29種類ありますが、建設業許可はそれぞれの種類で「一般」と「特定」を分けて取ることができます。
例えば、「土木工事」で一般建設業許可、「電気工事」で特定建設業許可と別々に取得しても大丈夫です。
また、同一業種で「一般」と「特定」、両方の許可を取ることはできません。
それでは具体的に一般建設業と特定建設業の違いを見ていきましょう。
一般建設業許可に該当する場合
次のどれか1つに当てはまる場合は一般建設業許可を取得することになります。
1、下請として工事を行い、元請ではない
2、元請であっても、下請に出さないで、すべて自社で施工する
3、元請であっても、下請に4,500万円以上の工事を出さない
※建築一式工事の場合は7,000万円以上
極端に言うと、すべての工事を下請で受注すれば、一般建設業許可を取得することになります。
そのため、一般建設業許可は下請けの許可とも言われています。
特定建設業許可に該当する場合
特定建設業許可は、元請業者に必要となるものです。
必要となるケースは、発注者から直接受注した工事について、4,500万円(消費税込み)以上の工事を下請けに出す場合です。
これは請負一社あたりの金額ではなく、1つの工事で出した下請の合計金額が4,500万円以上になる場合に該当します。
つまり、A社B社といくら小分けにして下請負しても、下請に出した合計金額が4,500万円以上になれば、特定建設業の許可が必要です。
※建築一式工事の場合は7,000万円以上
下請業者が孫請業者に4,500万円以上を再下請に出す場合は?
特定建設業許可は、元請業者が受注した工事を4,500万円以上を下請に出す場合に必要となる許可です。
下請業者である限り、例え4,500万円以上の工事を孫請業者に出しても、特定建設業許可は必要ありません。
特定建設業許可の目的は?
建設工事は重層化した下請構造を持っていて、独立した専門工事業者の総合的な組み合わせで成り立っています。
そのため、特定建設業許可は、下請業者の保護や建設工事の適正な施工を目的に設けられています。
もし、元請業者が倒産してしまうと、下請業者も連鎖倒産をするなど、大きな被害が出てしまいますので、4,500万円超という
多額の金額を下請に出す立場として、経営的にも技術的にもしっかりした会社であることを証明しなければなりません。
そのため、特定建設業許可は、一般建設業許可に比べて、「専任技術者」と「財産的基礎」の2つの要件が特に厳しくなっています。
2つの要件が厳しくなる
建設業許可を取得するには5つの要件を満たす必要があります。
前述のとおり、特定建設業許可の場合は、このうち「専任技術者」と「財産的基礎」の2つの要件が特に厳しくなっています。
専任技術者の要件
特定建設業の場合は次のいずれかの資格または経験を持つ専任技術者が必要になります。
1、資格
建設業の種類に応じた国家資格者
(例)土木工事業:1級土木施工管理技士、技術士
建築工事業:1級建築施工管理技士、1級建築士
2、経験
一般建設業の要件+建設業の種類に応じた工事について、元請として4,500万円以上の工事を2年以上、指導監督をした実務経験
※特定建設業のうち、指定建設業(土木、建築、管、鋼構造物、舗装、電気、造園)の7種類に関しては必ず1級の国家資格等が必要になります。
財産的基礎の要件
特定建設業では財産的基礎要件として次の4つのすべてに該当しなければなりません。
1、資本金が2,000万円以上ある
2、自己資本が4,000万円以上ある
3、欠損額が資本金の20%以下である
4、流動比率が75%以上ある
特定建設業許可の注意点
特定建設業許可を取得する上で特に注意しておきたいのは財産的基礎要件です。
特定建設業許可の財産要件は新規申請のみならず、5年ごとの更新時にも確認されます。※一般建設業許可は新規のみ
そのため、更新のたびに継続して財産要件をクリアしなければなりません。
また、専任技術者も要注意です。
専任技術者が1人しかいなければ、その人が退職すれば、許可の要件を失ってしまいます。要件を満たした専任技術者を複数名雇用できる体制が理想です。
まとめ
建設業許可500万円以上の工事を受注する場合、元請・下請を問わず必ず必要になります。
この記事でお話ししているのは、元請として工事を受注し、4,500万円以上の工事を下請に出すケースについてです。
元請ではなく、すべての工事を下請として受注するなら「一般」、元請として4,500万円以上、下請に出す場合は「特定」となります。
特定建設業許可で注意したいのは、「専任技術者」と「財産的基礎」です。
もし、これらの要件を満たさなくなれば、一般建設業許可を取り直さなければなりません。
要件を満たさなくなれば、その時点で許可は失効します。
失効すれば、当然ですが、「許可の空白期間」が生じるので注意が必要です。
また、特定建設業許可を取っても、請け負った建設工事をそのまま一括して下請に出すこと、いわゆる「一括下請負」は原則的に禁止されています。