平成11年の改正により、営業所ごとに置く専任技術者になるための要件が穏和されました。
これは許可を受けようとする業種と技術的な共通性がある他の業種の実務経験を、許可を受けようとする業種の実務経験としてカウントしてもよいとするものです。
この記事を読んでいる人は次のような疑問があるのではないでしょうか?
- 許可を受けようとする業種は要件穏和措置の対象か?
- 要件穏和により何年短縮されるのか?
- どのようなルールや組合せのもとで要件が穏和されるのか?
この記事ではこのような疑問を中心に解説し、また、平成28年に業種に追加された解体工事業の要件穏和についても言及していますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
実務経験の要件穏和で何年短縮されるか?
許可を受けようとする業種に8年以上の実務経験があり、その他の業種の実務経験と合わせて12年以上となれば専任技術者となることができます。
ということは、その他の業種の実務経験が4年あれば、許可を受けようとする業種は最低8年間の実務経験でいいので、2年間短縮されることになります。
要件穏和の対象となるのは10の専門工事
要件穏和の対象となる業種は限られています。
具体的には次の10の専門工事です。ここに許可を受けようとする業種が記載されていれば、最短8年の実務経験で許可を取れる可能性があります。
・大工工事業
・とび・土工工事業
・屋根工事業
・しゅんせつ工事業
・ガラス工事業
・防水工事業
・内装仕上工事業
・熱絶縁工事業
・水道施設工事業
・解体工事業
ここに許可を受けようとする業種が記されていなければ、必ず10年以上の実務経験が必要になります。
実務経験の振り替えが認められる2つのパターン
実務経験の振り替えが認められるのは次の2つパターンがあります。
1、一式工事(土木工事・建築工事)から上記の専門工事への実務経験の振り替え
2、専門工事間での実務経験の振り替え
ひとつずつ見ていきましょう。
一式工事の経験を専門工事への実務経験に振り替える
一式工事(土木工事・建築工事)の実務経験を前述の10種類の工事と共通性のある業種の実務経験に振り替えることができます。
一式工事の実務経験の4年を → 専門工事の実務経験8年に追加できる = 12年
※専門工事から一式工事への振り替えはできません。(一式工事から専門工事への一方通行のみ)
土木一式工事と共通性のある専門工事
・とび・土工・コンクリート
・しゅんせつ
・水道施設
・解体工事
※解体工事は土木一式工事・建築一式工事のどちらでも振り替えが可能。
例
〇 しゅんせつ(8年)+ 土木一式工事(4年) = しゅんせつの専任技術者(12年)
✕ しゅんせつ(4年)+ 土木一式工事(8年) = 土木一式工事の専任技術者になれません。
専門工事の実務経験を一式工事の実務経験に振り替りかえることはできません。また、しゅんせつの専任技術者になるには、あと4年必要です。(8年以上必要)
建築一式工事と共通性のある専門工事
・大工
・屋根
・内装仕上げ
・ガラス
・防水
・熱絶縁
・解体工事
※解体工事は土木一式工事・建築一式工事のどちらでも振り替えが可能。
例
〇 熱絶縁(8年)+ 土木一式工事(4年) = 熱絶縁の専任技術者(12年)
専門工事間での実務経験の振り替え
専任技術者の要件穏和措置は、基本的に一式工事(土木・建築)の経験を専門工事の経験に振り替えることができるのですが、次の4つの専門工事については技術的に親和性が高いので、専門工事間での振り替えが可能です。
- 大工
- 内装仕上げ
- 解体工事
- とび・大工
「大工」と「内装仕上げ」の場合
「大工」と「内装仕上げ」は、相互に振り替えが可能です。
大工(8年) + 内装仕上げ(4年)= 大工の専任技術者(12年)
内装仕上げ(8年) + 大工(4年)= 内装仕上げの専任技術者(12年)
「解体工事」と「とび・土工」の場合
「解体工事」と「とび・土工」は、相互に振り替えが可能です。
解体工事(8年) + とび・土工(4年)= 解体工事の専任技術者(12年)
とび・土工(8年)+ 解体工事(4年) = とび・土工の専任技術者(12年)
2業種の専任技術者になるのに20年かからない
1人で2業種の専任技術者になるには、それぞれ10年ずつで20年以上の実務経験が必要になります。
しかし、要件穏和措置を適用すると、一式工事と専門工事の組合せでは18年、専門工事同士の組合せでは最短16年で要件を満たせることになります。
例
熱絶縁(8年) + 土木一式工事(10年) = 18年
「熱絶縁」と「土木一式工事の」専任技術者になれます。
大工(8年) + 内装仕上げ(8年) = 16年
「大工」と「内装仕上げ」の専任技術者になれます。
まとめ
いかがでしたか?
要件穏和は10つの専門業種に限って適用されるものです。
この要件穏和で専任技術者になるには、許可を受けようとする業種に最低でも8年以上の実務経験が必要です。
さらに、関連業種と合わせて12年必要なので、一式工事や専門業種に4年以上の実務経験が必要になってきます。
また、専門工事の実務経験を一式工事の実務経験に振り替えることはできないので、注意が必要です。
※以下の記事は専任技術者の要件や必要書類についての記事です。ご興味のある方は一読ください。
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