2020年10月の法改正により、社会保険への加入は建設業許可の要件となりました。
新規申請はもちろん、5年に1度の更新申請の際にも加入していなければ、許可は取り消しとなります。
以下は、法改正前の解説ですので、現在の事実とは違う内容となっています。ご注意ください。
(以下、2020年10月1日以前の情報)
国土交通省は、社会保険の加入促進に取り組んできましたが、2012年の改正によりそれがより強化されることになりました。
そこで気になるのが、建設業許可申請と社会保険の関係性ですが、社会保険に加入していなくても許可は取得できます。
ただし、その場合は行政指導を受けることになるのですが、この指導を無視すると最終的に許可が取り消されることにつながってきます。
とは言っても、すぐに許可が取り消される訳ではなく、しかるべき段階を経て処分が下されることになります。
この記事では、社会保険の未加入問題と社会保険の加入指導の流れについて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
社会保険の加入を推進する理由は?
国土交通省は、2012年以降、社会保険未加入対策を進めてきました。
特に、加入義務のある建設業許可業者の加入率に関しては100%を目指してきました。
また、労働者単位では製造業と同じ水準の加入状況(約90%)を目指しています。
ではなぜこれほどまで社会保険の未加入業者への取り締まりが厳しくなったのでしょうか?
まずはその背景から説明していきたいと思います。
公正な競争環境の構築
社会保険料の半分は企業が負担することになります。
社会保険に加入するには、当然ですがそれなりのコストがかかります。
未加入だとそれだけコストが浮くので、加入している企業よりも競争上有利となるおかしな図式が出来上がってしまいます。
法令を守って真面目にやっているものが馬鹿を見るというような状況は何としても変えていかなければなりません。
若年者の人材の確保
建設業界は若者の入職者数が大幅に減少してきています。
若者の入職者数が減れば、熟練者から若者へと技術の承継が難しくなり、建設業界の発展が阻害されてしまいます。
減少している大きな要因は、やはり就労環境にあります。
年間休日数やボーナスがどうかということもありますが、その中でも社会保険が完備されているかどうかは就職活動で特にチェックすることです。
就職活動をするにしても、学校側も社会保険が完備されていない企業であれば、生徒に紹介ができません。
また、保険に加入していなければ、ハローワークで求人募集もできません。
保険に加入する企業が増えれば、やはり全体として入職率は上がるはずです。
加入しなければどうなるの?
加入義務があるのに社会保険に未加入であれば、行政庁から指導を受けることになります。
指導が行われるキッカケとしては、これから建設業許可を取る、もしくは、許可を持っているなら、新規申請、更新、経営事項審査の際に加入状況を確認されます。
許可を持っていなければ、立ち入り検査で指導が行われます。
保険の加入状況を確認する立ち入り検査はすべての建設企業が対象となり、年間を通して随時行われます。
その中でも下請取引等実態調査の結果に問題があったり、駆け込みホットラインなどへの違反通報があれば、やはりそういった企業から優先的にに立ち入り検査の対象となります。
※立ち入り検査の際は、事前通知があります。(日時や必要書類等について)
指導の流れは?
指導の流れは以下の手順で行われます。
- 新規申請・更新、経営事項審査、立ち入り検査の際に加入状況を確認。
- 未加入の場合は指導文書の送付。(一定期日までに保険加入の報告をする)
- 報告しなければ保険担当部局(厚生労働省・年金機構)に通報。
- 保険担当部局による加入指導
- 期日以内に加入をしなければ、強制加入
- ここで加入をしなければ、許可行政庁から建設業法に基づく監督処分を受けることがある。
監督処分は、指示処分 → 営業停止処分(3日以上)→ 許可の取消しの順に行われます。
加入をしないその他のデメリット
経営事項審査の減点対象になる
社会保険が未加入場合、公共工事を受注する際に受ける経営事項審査で減点対象となります。
この減点措置は2011年の改正でより厳格化されました。
雇用保険、健康保険、厚生年金保険がいずれも未加入の場合は120点の減点となり、改正前と比べると2倍増と大幅に減点されることになりました。
下請とし選ばれない可能性がある
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインでは、加入義務があるのに社会保険に未加入であれば、下請として選定しないという方針を打ち出しています。
社会保険に加入しなければ、下請として選ばれなくなる可能性がどんどん高くなってきています。
変革は発注者にも求められる
過度の価格競争が起こったり、必要以上に低下価格で発注をされると、保険料である法定福利費は当然確保できませんよね。
このように考えると、社会保険未加入問題の原因は工事費用を安くしたいという発注者にもあると言えます。
これは、元請業者が下請けに出す場合も同様のことが言えます。
国土交通省はガイドラインで、民間の発注者に対しても低価格発注をできるだけ避け、見積時に法定福利費を必要経費として考慮すべきことを定めています。
この法定福利費は建設業法19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれていなければなりません。
請負金額が「通常必要と認められる原価」に満たなければ、建設業法違反となってしまいます。
※詳しくはこちらの建設業法の下請保護規定|不当に低い請負代金の禁止規定について解説で解説しています。
まとめ
いかがでしたか?
社会保険未加入業者への取り締まりは今後さらに厳しくなってきます。
社会保険の加入が建設業許可の要件になるのは、おそらく、そう遠くない未来ではないでしょうか。
また、元請業者からの加入指導も義務付けられるようになり、この記事でも言いましたが、未加入だと下請業者として選ばれなくなる可能性が高まってきます。
社会保険が未加入だとそもそも現場にも入れないという時代がそこまで来ていますので、今一度社会保険の加入について見直してみてはいかがでしょうか。