特定建設業許可は、元請として発注者から直接受注した工事において、4,000万円(建築一式工事は6,000万円以上)以上の工事を下請けに出す場合に必要になります。

元請としての社会的責任が重くなる分、特定建設業は一般建設業より許可要件が当然厳しくなります。

ただし、特定建設業の許可要件が厳しくなるのは、専任技術者と財産的基礎要件の2つのみです。

他の3つの「経営業務の管理責任者」「誠実性」「欠格要件」については一般建設業と同じです。

この記事では、特定建設業の許可要件である専任技術者と財産的基礎要件に焦点を絞って解説しています。

※特定建設業許可が必要かどうか理解に不安のある方はまずはこちらの建設業許可|「一般」と「特定」の違いを完全解説でご確認ください。

特定建設業許可の要件

前述のとおり、特定建設業の許可要件が一般建設業の要件と異なる点は、専任技術者と財産的基礎要件の2つのみです。

そしてその専任技術者の要件も一般建設業の専任技術者の要件がベースになっています。

一般建設業の許可要件を把握していない方はまずはこちらの兵庫県の建設業許可|7分で理解できる許可取得のための5つの要件をお読み頂きますとより一層理解が深まります。

建設業許可は次の5つの要件を満たす必要があります。

建設業許可の要件をもう一度確認しておきましょう。

経営業務の管理責任者がいること

営業所ごとに置く専任技術者がいること

財産的基礎または金銭的信用を有する

誠実性の要件

欠格要件に該当しないこと

※クリックするとそれぞれの要件の詳細を確認できます。

 

特定建設業の専任技術者の要件

特定建設業の専任技術者については、次いずれかに該当する必要があります。

①許可を受けようとする業種について、国土交通大臣の認めた技術検定、資格試験などに合格した者

②一般建設業の技術者に該当する者のうち、発注者から直接請負った工事の請負金額が4500万円以上の工事に関して2年以上の指導監督的な実務経験がある者

③国土交通大臣が1または2の者と同等以上の能力を有すると認定した者

 

①資格で要件を満たす場合

資格等で、特定建設業で専任技術者の要件を満たす場合は、一般建設業の場合よりも、さらに高度な資格が必要になります。

高度な資格とは、国家資格の場合ですと「1級」のことです。

例えば、特定建設業で、管工事業の専任技術者の要件を国家資格で満たす場合、「1級管工事施工管理技士」が必要になります。

一般建設業のように2級レベルの国家資格では要件を満たせません。

 

②実務経験で要件を満たす場合

一般建設業の技術者に該当する者とは、一般建設業の専任技術者のことです。

つまり、一般建設業の専任技術者の要件を満たせていれば、それに加えて、元請として4500万円以上の工事に関して2年以上の指導監督的な実務経験があれば、特定建設業の専任技術者の要件を満たすことができます。

指導監督的な実務経験とは、現場監督や主任技術者として工事の技術面を総合的に指導監督した経験のことをいいます。

 

ちなみに、主任技術者になるための要件は、専任技術者になるための要件と同じです。

つまり、主任技術者で指導監督した経験があれば、特定建設業の専任技術者の要件を満たせていることになります。

主任技術者についてはこちらの建設業許可|主任技術者とは?監理技術者や専任技術者との違いを完全解説で詳しく解説しています。

 

指定建設業の場合の注意点

次の7つの指定建設業に該当する場合は、1級等の国家資格でしか特定建設業の専任技術者の要件を満たすことができません。

つまり、実務経験では要件を満たせません。必ず1級等の国家資格を持っていなければなりません。

また、工事現場に配置しなければならない主任技術者も同様に1級等の国家資格で要件を満たす必要があります。

・土木工事業

・建築工事業

・管工事業

・鋼構造物工事業

・舗装工事業

・電気工事業

・造園工事業

 

特定建設業の財産的基礎要件

特定建設業の財産的基礎要件は、申請直前の決算で次の3つの基準すべてを満たしている必要があります。

  1. 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
  2. 流動比率が75%以上であること
  3. 資本金の額が2000万円以上あり、かつ自己資本の額(純資産合計)が4000万円以上であること

これらの値は、直近決算の貸借対照表で確認します。

財産的基礎要件は5年に1度の更新時にも満たしておく必要があります。

 

欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと

原則、次の計算式で求めます。

(マイナスの繰越利益剰余金 -(資本剰余金+利益剰余金+その他利益剰余金))÷ 資本金 × 100% ≦ 20%

ただし、繰越利益剰余金がプラスになっていれば、それだけでクリアできています。上記の計算をわざわざする必要はありません。

また、繰越利益剰余金がマイナスの場合は、以下の計算式で求めることもできます。

資本剰余金+利益剰余金+繰越利益剰余金を除いたその他利益剰余金 ≧  繰越利益剰余金

 

流動比率が75%以上であること

流動比率は以下の計算式で求めることができます。

「流動比率」 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 = 75%以上

 

資本金の額が2000万円以上あり、かつ自己資本の額(純資産合計)が4000万円以上であること

貸借対照表で確認します。

資本金については基準を満たしていなくても、許可申請日までに増資を行うことで基準を満たせば、基準を満たしているものとみなされます。

また、新設法人に関しては、資本金の額が4000万円以上あれば、上記3点すべてをクリアしているものとされます。

 

まとめ&注意点

いかがでしたか?

特定建設業の許可要件の専任技術者と財産的基礎要件は、一般建設業よりも厳しくなります。

許可取得後の注意点としては、4,000万円(建築一式工事は6,000万円以上)以上の工事を下請けに出す場合、工事現場に主任技術者ではなく、監理技術者を配置しなければいけないという点です。

この監理技術者は必ず専任でなければなりませんので、専任技術者と兼務することはできません。

監理技術者になるための要件は、特定建設業の専任技術者になるための要件と同じです。

つまり、これは特定建設業の専任技術者になれる要件を備えた人材が2人必要になることを意味します。

また、財産的基礎要件は5年に1度の更新時にも満たしておかなければなりません。

満たしていなければ、許可は失効してしまいます。

このように特定建設業許可は、許可取得後も事業や要件を維持していけるかどうかきっちり見極めた上で検討する必要があります。