建設業の許可は、取得後も要件を満たしたまま維持していかなくてはなりません。

要件が満たせなくなると許可は失効してしまうからです。

要件は全部で5つありますが、経営業務の管理責任者と同様、専任技術者が欠けてしまうことで、許可が失効してしまうケースは実際よくあります。

専任技術者がいなくなってしまった場合の対処法として、外部から雇い入れるという方法もありますが、トントン拍子で要件を満たしている人を採用できるとは限りません。

そのため、不測の事態に備えて、常日頃からコツコツとした予防策が必要になってきます。

この記事では、専任技術者が急にいなくなってしまったときの対処法について解説しています。特に、専任技術者がいなくなっても許可を維持できる雇用のしくみ作りについて重点的に解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

一番の近道は外部から雇い入れる

許可を取得するにあたって専任技術者がいない、もしくは退職等でいなくなってしまった場合の一番の近道は、やはり専任技術者を外部から雇い入れることです。

これは経営業務の管理責任者(以下、経管)も同じですが、経管よりも雇い入れることの障害は少ないと言えることができます。

経管は経営に携わる者ですし、役員登記が必要になります。その分、あらかじめある程度の信頼関係が構築できている必要がありますよね。

しかし、専任技術者は、経営者でもなければ、役員登記も必要ありませんし、国家資格1つあれば従業員でも専任技術者になれます。

極端に言えば、役員である必要がないので、要件の1つである欠格要件に該当していてもいいということになります。

※経管がいなくなった場合の対処法についてはこちらの経営業務の管理責任者がいないときの最善策を解説を参考にしてください。

 

届出が必要

代わりの者がいれば、その旨を所轄窓口に届け出なければなりません。

2週間以内に「専任技術者証明書」と要件を満たしていることを証明する書類を届け出ます。

 

代わりの者がいないとき

専任技術者が退職し、残念ながら後任者が見つからなかった場合は、2週間以内に「届出書」を提出する必要があります。

提出すると、行政指導により「廃業届」を提出することになります。

この「廃業届」は許可を受けていた建設業の一部を廃止するために届出ます。会社をたたむということではありません。

※届出書と廃業届についてはこちらの建設業許可|廃業届と届出書の概要と関係性を解説で詳しく解説しています。

正直に届け出る

廃業届を提出すると、許可は取り消されますが、必ず正直に届け出てください。

届出ないと思わぬところでペナルティーを受けることになります。

廃業届を出さずにバレると許可の取消しだけでなく、5年間は許可を取ることができなくなります。

廃業届を提出すると、許可は取り消されますが、要件さえ満たせばすぐに取得できます。

その際、新たに手間と費用がかかってしまいますが、5年間も許可が取れないことに比べれば、決してその手間と費用は惜しくないはずです。

 

専任技術者が欠けることに対する予防策

専任技術者が急にいなくなっても、あらかじめ許可を維持できる雇用のしくみ作り、予防策が必要です。

次のいずれかの要件を満たしている者を常に複数在籍するようにしてください。

1、資格者

2、許可業種に関連する高校、大学の卒業者で3年または5年の実務経験がある者

3、許可業種の実務経験が10年以上ある者

1番いいのは、やはり資格を持っている人です。

場合によっては、資格1つで複数の業種の専任技術者を兼ねることもできますし、要件を証明する確認資料も資格証1枚で済みますよね。

次に実務経験んを満たしている人になりますが、トントン拍子で要件を完璧に満たしている人を採用できるとは限りませんよね。

その場合は、当然ですが、より早く要件を満たせる人を優先して採用します。

例えば、大学の指定学科卒業だと3年の実務経験で済みますよね。

※専任技術者の要件についてはこちらの建設業許可|3分で理解できる専任技術者の要件でも解説しています。

 

過去の常勤性の証明が必要

過去の実務経験の証明とともに、その実務経験を積んだ職場で常勤で勤務していたことの証明が必要になります。

例えば、10年以上の実務経験で要件を満たすなら、常勤で10年間働いたことの証明が必要ですし、大学の指定学科卒業者だと常勤で3年間働いたことの証明が必要になります。

まだ、要件を満たしていない人をこれから採用する場合は、やはり社会保険に加入させる方が賢明です。これは常勤の証明が簡単になるからです。

※国家資格で要件を満たす場合は、常勤の証明は必要ありません。

 

対処法や注意点は企業の規模によって違ってくる

専任技術者が欠けた際の対処法や注意点は中小企業と大企業によって変わってきます。

1つずつ見ていきましょう。

中小企業の場合

中小企業、特に個人事業主や一人親方の場合は、社長が専任技術者と経営業務の管理責任者を兼ねていることがよくあります。

もし例えば、社長が病気や事故などでいなくなれば、社長に代わる専任技術者と経営業務の管理責任者の両方を選任しなければなりません。

これは何も準備をしていなければ、非常に難しいものがあります。

ですので、予防策としては、例えば家族の者が、取締役(個人事業の場合は支配人)として許可業種の現場監督を務めて、あらかじめ要件を満たしておくなどの対策が必要になってきます。

従業員が少数の比較的小規模な事業所では、経営者の1人が、経管と専任技術者を兼ねるケースは多いものです。

やはり、不測の事態に備えて、もう一人を役員に就かせて、許可業種の実務経験を積ませるなどの対策が必要です。

そして、専任技術者の常勤性を証明するために、最低限の役員報酬はきっちり支払ってください。年間を通して、最低でも月に17万円支払っていれば、専任技術者の常勤性は証明できるでしょう。

 

大企業の場合

大企業では専任技術者を欠いても、中小企業のように代わりの者を探すのにあまり苦労しない分、明確な計画を持たずに人事異動を行ってしまうことがよくあります。

その結果、営業所ごとに置く専任技術者を欠いてしまう事例が後を絶ちません。

ここで特に注意したいのが、専任技術者の要件を国家資格で満たすことができない許可業種です。

 

例えば、「機械器具設置工事業」「電気通信工事業」は、国家資格1つで要件を満たすことはできません。この2つは10年以上の実務経験で満たすことがほとんどです。

このような許可業種は、いくら大企業でも要件を満たした人材を見つけるのは簡単ではありません。また、要件を満たした人材を見つけてきても、資格のように「資格証」1枚で証明することができないので、10年分の実務経験を書類で証明しなければなりません。

 

これは想像以上に大変ですし、要件を満たしていても書類で実務経験を証明することができなかったということはよくあることです。

ですので、大企業の場合、明確な計画を持たずに、軽はずみに人事異動は行わないように注意してください。

特に上記の2つの業種は、大企業の子会社で取り扱うことが多いですし、出向などの場合、短期間で異動がよく起きるので注意してください。

 

まとめ

いかがでしたか?

今すぐ専任技術者の人材が必要という人は、やはり外部から雇い入れるというのが近道となります。

その際、優先順位として資格を持っている人を採用するのがベストです。

 

また、退社等の予防策としては、資格の取得を推進するなどコツコツと育てることが必要です。

ただし、要件を満たした人材を確保できれば、それに越したことはありません。

その際も、やはり資格を持っている人を優先に雇用するのは言うまでもありません。

 

実務経験で要件を満たす場合は、指定学科卒業者などより早く要件を満たせる人を優先して採用してください。

また、実務経験の場合は、実務経験とともに常勤性も問われますので、社会保険に加入させるなどの対策が必要です。

そして、要件を満たせていても、それを証明する書類がなければ、専任技術者にはなれませんので、実務経験と常勤性を証明する書類は必ず確保していてください。

※専任技術者の確認資料についてはこちらの専任技術者の確認資料は?建設業許可申請書に添付する書類を解説で詳しく解説しています。